センター試験も終わり、国公立大学の2次試験や私立大学の試験に向けて、多くの受験生がラストスパートをかけているこの時期。難関大学の現役学生が中心となり、高校生を応援する取り組みを行っている「合格サプリ編集部」に話を聞いた。【東京大・高橋瑞季】
勉強法から本番の心構えまで
彼らの主な活動は「合格サプリ」という、40ページほどのフリーペーパーの発行。北陸を除く全国各地の高校で配布されている。
内容は、科目ごとの勉強法や試験の日の過ごし方、大学生活についてなど。「高校生の知りたい情報全てを」という思いの下、幅広いテーマを扱っている。これまでは1、6、10月の年3回の発行だったが、2020年度からは4月号、さらに一部地域では卒業生向けの卒業祝賀号も加わるそうだ。
毎週土曜日の編集会議で、次号の企画を立案。その後、各編集部員は編集長と原稿のやり取りをしながら、およそ2カ月かけて記事を執筆する。レイアウトを決めてイラストのラフ案を考えるのも彼ら自身だ。また、企業から印刷費や配送費といった運営資金を調達し、全国の高校に向けてフリーペーパーの配布を依頼するといったことも行う。
保護者向けにも
保護者版の合格サプリも。最新号の1月号には、センター試験後に燃え尽きてしまった子どもへの対処法、合格後の入学手続きや新生活準備の流れなどが載っていた。生徒向けのものはホームルームの時間や進路指導室で配られるが、こちらは保護者会で配布される。
最新号の発行部数は約37万部。多くの高校生やその保護者に読まれている。彼らが求めるものにより近づけようと、毎号アンケートも実施。前号では約3000もの回答が集まった。ここ最近でアンケートの結果から実現した企画として、「理系大学生の授業紹介」がある。編集部員は文系の学生が多く、企画も文系向けのものが多かった。「理系向けの記事も書いてほしい」との要望を受け、実現した。
遠くない過去に受験をくぐり抜けてきた現役の難関大学生たちだからこそ、高校生の視点を反映した記事を書ける。「受験には1冊の参考書を極めるべきだ」というアドバイス一つとっても、どこまでやれば「極めた」と言えるのかなど、読者が行動に反映できるレベルまで詰めることを忘れない。
ウェブでも発信
その他にも受験情報ウェブサイトの運営や、夏には東京大学キャンパスツアーも行っている。幅広い読者層が求める内容の記事を載せるフリーペーパーに対し、ウェブサイトには「上智大学の『カトリック推薦』とは?」といった、読者層は狭いけれど必要な情報も掲載。キャンパスツアーはフリーペーパー上で参加者を募り、受験相談会と合わせて実施する。
幅広いアプローチで、高校生をサポートしている合格サプリ編集部。活動をしていて良かったと感じる瞬間は「アンケートでメッセージをもらった時。記事を読んでやる気が出た、大学に受かったら一緒に活動したい。そういった言葉をもらうとうれしい」。そう答えた、編集長で東京大2年の沢田晴登(はると)さん。
実際に、現在の部員約40人のうち、半数以上が高校時代から合格サプリの記事を愛読していた。東京大1年の北島駿さんもその一人で、ウェブサイトの記事を参考に勉強していた。「周りには東京大を志望する生徒が自分の他にほとんどおらず、孤独だった」と、当時を振り返る。だからこそ合格サプリの存在は、情報を得るために役立ったそうだ。北島さんは参考書選びについてなど、独学で大学合格を目指す生徒の視線に立った記事を書いている。
受験生へ
受験生時代の勉強法について話を聞いた。沢田さんは「高校3年生の時は、間違えた問題は解答を読んで理解できれば、それでよいと思っていた。浪人してからそれまでの自分の姿勢を見直すように。同じ問題に出合った時に、何も見ずに解答を『再現』できて初めて、理解したと言える」と「再現できること」の大切さを説く。また、慶応大2年の小平あゆみさんは「24時間の予定を記入できるスケジュール帳を使い、1週間単位や1カ月単位で勉強の計画を立てていた」という。
最後に、受験生へのメッセージ。「直前期は誰でも不安。けれど何が『不安』なのかを突き詰めることで、それを『危機感』に変え、具体的な対策を取ることができる」と沢田さん。「最後まで諦めないで」と、編集部員は口々に応援の言葉を寄せた。
記者もかつて愛読していた「合格サプリ」。全ての受験生たちは、新たな編集部員の候補。彼らが力を出し切れるよう、陰ながら健闘を祈っている。