第101回箱根駅伝 立教大、応援背に急成長

箱根駅伝取材班
「花の2区」で区間7位のエースらしい走りを見せた馬場選手

 2、3日に行われた第101回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)。キャンパる編集部は今大会、昨秋の予選会をトップ通過して、全日本大学駅伝でも初出場ながら7位入賞し、シード権を獲得して勢いに乗る立教大学に注目。長期間の密着取材を行ってきた。途切れることのない応援を背に選手らは意地の走りを見せ、往路8位、復路12位の総合13位でゴールテープを切った。今季、急成長したチームの主軸である選手4人に思いを語ってもらった。【箱根駅伝取材班】

◆2区 馬場賢人選手 魂の走り、チームに勢い

 馬場選手は、自身の強みは攻めの走りだと自負する。「最初から積極的に仕掛けるのが自分らしいレースなのかな」と語り、練習の時から積極的に先頭を引っ張ることを心がけてきた。

 そんな馬場選手の強さを支えるのは、穏やかで楽観的な性格と、安定したメンタルだ。事前の取材中も、柔らかい雰囲気で受け答えする様子や笑顔が多くみられたことが印象的だった。大事なレースの前にも不安になることは少ないそうで、「どうにかなるだろう、みたいな感じ」と話していた。

 3年連続出場となった今回の箱根駅伝。起用されたのは、希望通りの2区。各校のエースがそろう厳しい区間で、タスキを受けた時に16位だったチーム順位を9位にまで引き上げる魂の走りを披露した。

 レース直後「途中、キツ過ぎて何度もくじけそうになった」と率直に語った。ただチームを勢いづけた自らの走りについては「次の人に少しでも楽に走ってもらおうという一心で、諦めずに走ることができた」と安堵(あんど)した表情で振り返った。

◆4区 林虎大朗(こたろう)選手 沿道の激励に鼓舞され

  3年連続で箱根路を駆けた林選手。去年、一昨年はそれぞれ1区で18位だったが、今年は4区で区間順位12位と意地を見せた。

 悔いの残った昨年の正月から2カ月後の3月中旬、自ら志願しチームでただ一人、米プロチームの合宿に参加した。「この1年は大事な年になる」。そんな危機感が林選手をかき立てた。

 五輪を目指すプロ選手たちに交じり走る中で強い衝撃を受けた。「生活習慣の次元から競技への姿勢が全く違う」。自らの陸上への向き合い方を見直す契機になった。また、課題だったレースへの対応力も磨くことができたという。

 大学生活最後の箱根を走り終えて「過去一番にきつかったが、馬場選手の激走や沿道の激励に鼓舞され悔いなく走れた。陸上人生で最も濃い1時間だった」と振り返った。

 後輩には「ここからが始まりだ。今は伝統を作る段階にきている」と思いを託した。卒業後は地元福岡に帰郷し、西日本鉄道の実業団選手として活動する。「帰ったら少しでも地元に恩返しをしたい」と語った。

◆9区 安藤圭佑選手 悔しさ半面、手応えも

 「チームとしても個人としても成長できた4年間だった」。普段から穏やかな笑顔が印象深い安藤選手は、晴れやかな表情で江戸紫のタスキに別れを告げた。

 主将に就任したタイミングで前監督が退任。突然の環境の変化に、焦りを覚えたこともあった。だが次第に、選手一人一人が自分自身の練習メニューを考えられるような自主性が生まれた。この変化がチームを急成長させる原動力になり、今季は予選会でトップ通過、全日本大学駅伝は初出場で初シード権獲得と、快進撃が続いていた。

 今回の箱根駅伝では9区を走り、区間11位と健闘した。往路成績はシード圏内で、そのままチーム目標達成かと期待された中での総合13位には、悔しさがにじむ。それでも「箱根でここまで戦えるようになった」と手応えも口にする。

 卒業後は一般企業に就職する安藤選手にとって、この箱根路はラストラン。「(シード権獲得は)後輩が頑張ってくれると思うので託したい」と、主将らしい一言で憧れの舞台を後にした。

◆補欠 国安広人選手 サポート経験「来年へ」

 「今まで陸上やってきた中で一番悔しい」。安定感と粘り強さを武器に、前回、前々回ともエース区間の2区に起用された実績がある国安選手だったが、今大会は選手として起用されなかった。大会直前に行われた合宿中に膝を痛め、調子が上がらなかったという。

 昨年11月の全日本大学駅伝では2区で起用されたが、6位から14位へ順位を落としてしまった。ただチームは最終的に初出場にしてシード圏内の7位という好成績を収め、仲間に救われた形だった。

 それだけに箱根にかける思いは強かった。2区の区間順位は前々回が18位、前回は20位。「今回は思い切って走り、リベンジしたい」と語っていたが、思いは果たせなかった。

 走り以外の面でもチームに貢献したいという思いから、大会前から主将をやりたいと話していた。「サポートに回った経験も生かしたい」と主将への思いは変わらない。来年の箱根路に向けて「ラストランなので悔いのないように全力で頑張りたい」と意気込んだ。

鶴見中継所に駆け込んでくる9区の安藤選手を待ち構える国安選手

往路 強さ見せつけた青学

 101回目となった今大会には関東学生連合を含む21チームが出場。往路は、レースが進むにつれて選手層の厚さを見せつけた青山学院大が、2年連続7回目の優勝を達成した。

 1区は中央大の吉居駿恭選手が独走。レース前半は同校が主導権を握った。青学大は1区で10位と出遅れたが、流れを一気に変えたのが2区の黒田朝日選手だった。区間記録を塗り替える圧巻の走りで3位に浮上。4区でも太田蒼生選手が区間賞となり、トップの中大との差を詰めた。そして山登りの5区では若林宏樹選手が区間新記録の走りでついに中大を捉え、逆転で首位に立った。

 往路2位は、青学大と1分47秒差の中大。3位は2分29秒差の早稲田大だった。レース前に青学大にならぶ「3強」と目された駒沢大は4位、国学院大は6位。シード権獲得を目指す立教大は8位につけた。

復路 終盤、シード争い白熱

 往路の快晴と打って変わり、曇天でのレースとなった復路。往路首位の青山学院大は、山下りの6区で野村昭夢選手が区間新記録の快走を披露し、序盤から優位に立った。その後も独走を続け、1位でゴール。総合成績で大会新記録をたたき出し、連覇を達成した。

 総合2位は駒沢大。7区の佐藤圭汰選手が区間新記録をマークするなど往路4位から二つ順位を上げた。復路成績は大会新。総合3位は往路6位から巻き返した国学院大となった。

 終盤はシード権確保をめぐる争いが白熱した。帝京大、東洋大、順天堂大、東京国際大の4校が最終10区のラスト数百メートルまで手に汗握る接戦を繰り広げ、順大が7秒差で総合11位となり、シード権を逃した。

 8位スタートの立教大は総合13位でフィニッシュ。目標とした63年ぶりのシード権獲得は逃したが、昨年より一つ順位を上げた。

箱根駅伝取材班 山本ひかり(早稲田大)▽根岸大晟(駒沢大)▽新井江梨(成城大)▽薄井千晴(昭和女子大)▽宇野美咲(立教大)▽山本遼(明治大)▽園田恭佳(法政大)▽田野皓大(日本大)▽古賀ゆり(上智大)▽佐藤香奈(同)▽清水春喜(同)▽大牛愛子(日本女子大)

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