新聞週間前にニュースパーク企画展 地域活性化、可能性探る
15日からの新聞週間を前に、日本新聞協会が運営するニュースパーク(日本新聞博物館、横浜市)は、5日から企画展「地域の編集 ローカルメディアのコミュニケーションデザイン」を開催している。全国各地のローカルメディアの取り組みを紹介しているが、企画展では、今年創刊30周年を迎えた、キャンパるの記念記事も展示されている。同館館長の尾高泉さんに、企画展の狙いとキャンパるについて聞いた。【成城大・風間健、写真は東洋大・佐藤太一】
メディアと読者つなぐ試み紹介
新聞博物館は、日刊新聞発祥の地である横浜市で2000年に開館。多くの展示を通じて、新聞・ジャーナリズムの歴史や役割を学ぶことができる。年間約5万7000人が来場し、多くの小中学生も校外学習の一環として博物館を訪れる。
現在開催されている企画展の題目にある「ローカルメディア」。これは、日本各地において企業、自治体や個人が発行している洗練された紙メディアのこと。尾高さんによると、こうしたローカルメディアによって、人と地域のつながりを生み出す事例が増えているという。「DTPやネット印刷が発達して、デザインや文字組みなどが容易にできるようになった。デジタル時代に新聞を読む人が減っている一方で、若い人が各地でデザイン性の高い紙メディアを生み出している。この点に着目して企画を考えました」と尾高さんは語る。
今回の企画展では、テーマごとに七つのエリアを設けた。新しい発想や工夫で、読者とのコミュニケーションの仕組みを取り入れている紙メディアや新聞を多数紹介している。
例えば、エリア2「サブスクリプション(会員制)」。ここでは地方の食材と、その作り手を特集した情報誌がセットで定期的に届けられる「食べる通信」が紹介されている。これは全国36カ所の編集部がそれぞれ発行しているもの。日本各地の会員に「食」と地域情報を同時に届ける、いわば「食べもの付き情報誌」ともいえるものだ。このようなユニークな仕組みで、地方と消費者をつなげているという。
「キャンパる」出展
キャンパるの記事は、エリア3「投書・投稿でつながる」で見ることができる。本紙が出展された経緯として、「30年間も大学生による紙面作りの活動が続いていること。この時代に若い世代が紙媒体で勝負し、全国紙の地方版の紙面を作っている点が興味深い」と尾高さん。
現在キャンパる紙面は、首都圏に加え、九州、鳥取、関西、滋賀、東海、静岡、神奈川、栃木と全国9エリアに活動が拡大している。このことについて、尾高さんは「地域ごとに大学生らが、各地のメディアと連携し、地元の人材や周辺地域を取材する。この取り組みは、地方創生にもつながる素晴らしいこと」と語ってくれた。
展示中の紙面(3月5日)は、とうきょう、とちぎ、しずおかの学生記者が毎日新聞東京本社で座談会を行ったときのもの。参加した川畑響子さん(上智大2年)は「地域ごとの特色を実感できて面白かった」と話す。
今回の企画展には、ローカルメディアの作り手と新聞の作り手が、お互いの良い部分を学び、刺激しあえる場にしたいというテーマもあるそうだ。尾高さんは「一般の来館者の方々には、地域のために奮闘するメディアがあることを知ってもらいたい」と意欲を燃やす。
メディアが地方の振興という課題に大きな影響力を秘めていることを、今回の取材を通して改めて感じた。われわれキャンパる編集部も、全国のキャンパると連携し、地域振興に貢献していきたいと強く思った。
企画展は12月22日まで。月曜休館(月曜が祝日・振り替え休日の場合は翌日休館)。
■DTP
Desktop Publishingの略。紙媒体の原稿作成・編集・デザイン・レイアウトをパソコン上で行うこと。