読見しました スピード!

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 夜更けのリビングで、カードをたたきつける音が鳴り響く。最近我が家ではやっているトランプゲームの「スピード」。2人で対戦し、手持ちカードを先に無くした方が勝つ、文字通りスピード勝負のゲームだ。

 迎え撃つのは母。そろばんで培った彼女の素早い手さばきに翻弄(ほんろう)され、2回続けて敗れている。「あなたは注意力散漫なのよ」。そうダメ出しされても、何も言い返せない。トゲのある助言だが、素直に受け止めよう。

私は昔から負けず嫌いだった。どんなに小さなことでも勝負で負けるのはイヤ。勝つまで挑み続ける執着心がある。しかし決して器用なタイプではない。だからこそ人一倍時間をかけてでも、不得意なことを克服するのが好きなのだ。

 睡眠時間を削ってでも打ち負かしたい。私は、その場で再戦を申し出た。「スピード!」。かけ声に合わせて切るカードに熱がこもる。感覚が研ぎ澄まされる。リズムに乗ってくる。「スピード!」。わずかに母親のスピードを上回る。勝ち筋が見えてくると、自然とほおが緩んできた。最後のカードを力強くたたき出し、ついに3回目で初勝利を収めた。

 されど戦いはまだ終わらない。今度は母をもしのぐ腕前の姉との勝負。長い夜になりそうだ。【早稲田大・榎本紗凡、イラストは成城大・新井江梨】

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