私には苦手な飲み物があった。それはコーラだ。ジンジャーエールやメロンソーダなど、他の炭酸飲料は大好きなので、苦手だと言うといつも驚かれた。幼い頃に一度だけ口にしたが、独特の刺激的な香りと、喉にベッタリとくっつくような甘さに驚いて、なめるのがやっと。それ以来、ずっとコーラを飲まずにいた。
しかし大学生になって、その苦手を克服する出来事があった。去年の夏休み中に長野県で行われた部活動の合宿の時。同期生が皆のためにコーラを買ってきてくれたのだ。田舎でコンビニに行くのもひと苦労な場所で、わざわざ車を走らせて買ってきてくれた。
せっかく買ってきてくれたのに「苦手だからいらない」とは言えず、作り笑顔で自分の紙コップにもなみなみと注いだ。恐る恐る飲んでみると、意外と飲みやすい。以前は苦手だと感じた独特の香りや味も、意外と気にならず、むしろコーラの個性として受け入れられた。味覚が大人になったのだろうか、それとも逆に子どもの味覚になったのだろうか。大好きとまではいかないが、思いのほかおいしいと感じた。
その日以来、たまにコーラを飲みたくなる日がある。なぜだろう、コーラよりもジンジャーエールの方が好みなのに。きっと、あの合宿の時の楽しい思い出と共にコーラの味が記憶されているからだろう。【上智大・古賀ゆり、イラストも】