読見しました 真夜中の街歩き

読見しました

 今年の正月はいつもと違った。大みそかから年を越して元日未明まで音楽ライブのアルバイト。初めて日をまたぐ、約13時間のアルバイトだった。終電の時間は過ぎてしまい、始発までの時間を潰すため、近くのカラオケ店を目指し暗い道を1人で歩いた。昨年まで未成年で真夜中に出歩いたことがなく、少し憧れていた夜の街歩き。この日は少し自分にとって刺激的だった。

 カラオケ店は午前4時に閉まってしまった。始発電車まで残り約1時間。初もうでに行こうと思い、カラオケ店を探していた時に見つけた、近くの神社へ向かった。東京・飯田橋にあるその神社は初もうでの場所としてなかなか有名だったため、きっと多くの人でにぎわっていると思った。しかし時間的に電車がなかったからだろう。行ってみると、元旦であることを感じさせないくらい境内は静かだった。

まだ日の出を迎えてない薄暗い空と、元旦にのみ出される「謹賀新年」と書かれた赤いちょうちんに心が揺さぶられた。閑静な神社を見ながら冷たくて新鮮な空気で深呼吸できたあの瞬間、普段の生活における怠惰な考えや感情を浄化できた気がした。

 初もうでを終えた4時過ぎ。神社から駅につながる路地は、自分しかいない世界のようで、心が落ち着いた。たまには気分転換に夜更かしして真夜中に外に出てみるのもいいなと思った。【日本大・村脇さち、イラストも】

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