読見しました ピアノ

 我が家には大きな電子ピアノがある。私が小学3年生の頃にピアノを習いたいと母に懇願し、家での練習用に買ってもらったものだ。しかし、飽き性な私は熱中することもなく、中学生になる頃にはピアノを習いに行くことも、弾くこともやめてしまった。

 それ以降、家の和室で大きなスペースを占めているピアノを目にするたび、せっかく買ってもらったのに弾かなくなってしまったことを後ろめたく感じていた。ストリートピアノから美しい旋律が聞こえてきた時や書店で楽譜を目にした時など、また弾いてみようかなと思う瞬間は何度もあったが、忙しいことを口実に先送り。そんな状況でも、母は「いつかまた弾きたくなる時が来るかもしれないからね」と言って、売らずに取っておいてくれた。

そんなある日、単身赴任先から一時的に帰宅していたジャズ好きな父が、お気に入りのジャズピアノの楽譜を手に私に聞いてきた。「これなら初心者でも弾けると思う?」。ピアノを独学で始めてみたいという。

 離れて暮らしていることもあり、父とはコミュニケーションが希薄になりがちだ。しかし、ピアノが父と私の共通の趣味になれば、父との会話も増えるかもしれない。よし、私も父に教えられるようにもう一度ピアノを練習しよう。我が家のピアノが再び輝きを取り戻す日は近そうだ。【上智大・古賀ゆり、イラストも】

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