学生注目 若者の孤独感、知識不足原因 薬物乱用、食い止めたい

学生注目
東京・新宿の「トー横広場」。ここに集まる若者がオーバードーズで救急搬送されるケースがあり、問題化している

 大学生をはじめとする若者世代で大麻や違法薬物の所持、使用による検挙者が増加している。また市販薬などを過剰に摂取し、中毒症状を起こす「オーバードーズ」と呼ばれる薬物乱用も深刻な問題となっている。若者はなぜ危険な薬物に手を出してしまうのか。薬物乱用防止の啓発活動に尽力する2人の大学生とともに、理由や背景を考察した。【国士舘大・太田響】

海外で覚えた危機感

 比治山大学(本部・広島市)の現代文化学部4年、西沖魁晟(かいせい)さん(22)は今年3月14日、オーストリアのウィーンで開かれた、国際連合主導の薬物乱用防止活動に関する国際イベントに日本代表として参加。国際社会に向けて、日本の大学生が学校現場などで薬物乱用防止の啓発活動に取り組んでいることを紹介した。 西沖さんは昨年10月、同大学で開催された広島県主催の薬物乱用防止教室に参加。交流会を経て薬物乱用の危険度を認識し、薬物乱用防止活動に取り組むことで社会貢献したいと思うようになったという。そして公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターとライオンズクラブ国際協会が協力して育成する「薬物乱用防止教育認定講師」の資格を取得した。

 薬物乱用が深刻なのに防止対策が追いつかない国は世界的に多いのが現状だ。西沖さんは国連イベント出席を通じて「日本も一歩間違えれば諸外国と同じように薬物乱用が広まりかねないと感じた。国内で昨今、薬物関連の報道が増えていることにも危機意識を持っている」と語った。

届かない外部の目

 若者が大麻や危険な薬物に手を染める「入り口」はどこにあるのか。西沖さんは「若者の目に触れることが多いインターネット、SNS(ネット交流サービス)を用いて薬物の取引が行われている。中には密売目的の広告や、薬物乱用をあおる書き込みなどもみられ、薬物乱用の入り口になりやすい」と話した。

 国内の大学運動部で違法薬物を所持、使用したとして摘発される事件が相次いでいる。これはなぜなのか。西沖さんは「閉鎖的な組織では、一部のメンバーの行動がほかのメンバーに影響を与えやすい。違法な行為でも外部の目が届かないため、追随しやすくなってしまう」と考察している。

 このような状況下で、西沖さんは若年層への啓発活動は重要性を増していると感じている。「正確な情報提供と危険性の認識を高めるために、地域や学校での説明会や講座の開催がより一層求められている」と西沖さんは話した。

逃避手段として使用

 広島修道大学(本部・広島市)の健康科学部3年、松長明音さん(21)も昨年10月、薬物乱用防止教育認定講師の資格を取得した。同12月19日には広島市立伴南小学校で6年生170人を対象に、薬物乱用防止教室に講師として参加。薬物に関する基礎知識をクイズ形式で伝え、ゲーム内のキャラクターを活用して薬物事件に巻き込まれた際の対応の仕方をシミュレーションして紹介した。「子どもたちは私たちの話に興味津々で、前のめりになって参加してくれたことが印象深かった」と語った。

 中高生以下の世代で近年目立つのはオーバードーズだ。市販薬は入手が比較的容易なため若者の間で広がる一つの要因とされるが、松長さんが根本的な要因として指摘するのは若者の孤独感だ。「孤独感から来るストレスを和らげたり、リラックスしたりするための逃避手段として使用してしまうケースがある」という。しかしこれは一時的な効果であり、過剰使用で健康を害する可能性が高いことも強調した。

 クスリに逃げないためにはどうすればいいか。松長さんは「問題を独りで抱え込まずに相談できる人を見つけること、また没頭できる趣味や活動を見つけることが大切」と話した。

依存性など特性学ぶ

 孤立していなくても、好奇心からクスリに手を出すケースも多い。松長さんは「薬物の成分や効果への誤解、依存性についての理解不足など、知識の無さから危機感を感じにくくなっている。薬物の特性についてしっかりと学ぶ必要がある」とし、薬物に関する教育の必要性を訴えた。

 今年11月には、いわゆる大麻グミと呼ばれる大麻に似た成分を含む食品を食べた人が吐き気やめまいなどを起こし、病院に搬送された問題が注目された。西沖さんは「このような手に入りやすく危険性の高い商品が出回ることで、より危険な薬物に手を染める入り口になりかねない」と警戒している。

 西沖さんは来年から中学校の教師の道を進む決意を固めている。「教師として責任ある立場に立ち、引き続き薬物乱用防止の啓発活動を続けていきたい」と意気込む。また、警察官を目指す松長さんは「薬物乱用に限らず、身の回りで悩んでいる人がいればその支えになりたい」と語った。

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