首都圏の女子大学8校に在籍する学生が大学の垣根を越え、就職活動に備えて自分磨きをする「女子大学合同就活ゼミ」という取り組みがある。合同で就活支援を行う女子大ならではの事情や、参加する学生の思いを取材した。【昭和女子大・薄井千晴】
合同就活ゼミは2021年、新型コロナウイルスの感染拡大で学生同士の関係が希薄になることからくる就職への不安をサポートすべく始まった活動で、4年目の今年度は8校が参加している。
中心となったのは東京女子大だ。同大キャリア・センター課長補佐の村石隆造さんによると、コロナ禍でウェブ会議システムの利用が一般化したことで、合同開催のチャンスとみて他校に参加を呼びかけたという。初年度は同大と学習院女子大、実践女子大、津田塾大の計4校が参加した。
女子大はもともと、個々の学生へのきめ細かい就活サポートを行う「就活力」の高さに定評がある。ただ、村石さんによると「女子大は規模が小さいところが多く、就活で関心を共有する学生同士がなかなかつながりにくい」という共通の課題を抱えていた。
その課題を克服できないかと始まったのがこの合同就活ゼミだ。「女子大の学生という同じ立場で、目標に向かう熱量も同じなら意気投合できる。この枠組みを提供することで、学生の就活をさらにサポートできればいいと考えた」と村石さんは話す。
合同就活ゼミに参加するのは各女子大の3年生の希望者(計550人)だ。5~6月は各校での演習が基本。7月以降にグループ討論や面接練習会、企業説明会などを合同開催する。
自分らしさ目指し
講師を務めるのは、就活・新卒採用支援会社「カタパルト」(東京都世田谷区)代表の矢島慶佑さん。ゼミは、自分自身の強みの見つけ方など、どの業界でも通じる課題に対して全員で意見を出し合うグループワークが主体だ。矢島さんはサポートに当たって「学生の良いところや個性を共に考える中で探し、学生が自分らしく就活を進めることができるようになることを重視している」という。
記者も実際に、東京女子大で行われたゼミに参加させていただいた。印象的だったのは、課題に対して各自がしっかりとした意見を持ち、それをグループで聞き合い、質問し合っている姿。参加者は皆、同学年ということもあるせいか、和気あいあいと活動に臨んでいる様子が見て取れた。ここで就活の基礎知識を身につけた学生が、夏の合同イベントに臨んでいく。
人とつながる場に
各大学の校風はそれぞれ違う。でも多くの大学から集まることで、自分の大学の卒業生がいない企業の人と出会うきっかけをつかめるかもしれない。また、同じ業界を目指す人同士、情報交換がしやすい利点もあるだろう。
矢島さんも「就活自体に共学の大学と女子大に大きな違いはないが、支援のきめ細かさでは女子大が有利な部分がある」と言う。ただ総合職や理工系・情報系職種など、女子学生のキャリアの選択肢は年々拡大している。志願者数の減少や学校閉鎖、共学化など女子大を取り巻く環境は厳しいが、合同就活ゼミの取り組みは、こうした就活の多様化に対応し、女子大の魅力と強みをさらに伸ばす力を秘めているように思えた。
4回目の今年までに、合同就活ゼミに参加した学生は累計1350人。村石さんは「どの企業や業界に何人就職したかという数字にこだわりはない。ただゼミの卒業生が増えれば、人のつながりが縦、横、斜めと強くなる。そうすれば学生へもっと手厚くサポートができるようになる」と今後の展望を語る。
バイアス取り除く
合同就活ゼミの卒業生で、東京女子大現代教養学部4年の矢崎麻記さん(21)は、「就活を1人で進めるのが不安だった時に、大学キャリア・センターの公式LINEでこのゼミの存在を知って参加した。他大学の人も含めて刺激を与え合い、手探りからくる不安が解消されて、とても良い環境だった」と話す。
矢崎さんはゼミリーダーを務めていたが、「リーダーシップをとる経験を積めたことも、ゼミの利点だった」と語る。これは、このゼミだけではなく女子大が持つ特徴と言えるかもしれない。合同就活ゼミには男子学生はいないが、いないことで、リーダーも自然に女子学生が就く。「ゼミ参加者が、その人が本来持っていた自主性、積極性を出しやすくなる部分があった」のだと矢崎さんは言う。
リーダーになれる資質のある学生は男女を問わずいるのに、なんとなくリーダーに男性を選ぶ。そんな無意識に男女の役割を固定して考えるジェンダーバイアスは、まだ社会に根強く残っていると記者は考える。村石さんは「学生に本来あるべき姿で積極性を身につけてもらい、バイアスを除いた状態で社会に送り出すことは、女子大の存在意義そのもの」だと指摘する。
<2024年女子大学合同就活ゼミ参加大学・順不同>東京女子大、実践女子大、昭和女子大、聖心女子大、津田塾大、東京家政大、東洋英和女学院大、和洋女子大