新型コロナウイルスの感染拡大で広まった大学のオンライン(オンデマンド)授業。それを早送りで視聴する習慣が、大学生に根付きつつあるという。また趣味の動画や映画・ドラマも早送りで再生・視聴する若者の増加も話題となっている。スマートフォンやパソコンの早送り再生機能などを用いるこうした視聴法は「倍速視聴」といわれる。浸透の実態はいかほどで、浸透した理由は何なのか、大学生(1~4年生)と大学院生に尋ねてみた。
アンケートには116人が回答した。まず、学生の都合に合わせて授業動画を再生できるオンデマンド形式のオンライン授業を倍速で視聴したことがあるかどうか尋ねたところ、98人、8割超が「はい」と答えた。その理由を複数選択可で尋ねたら、7割超の人が「授業時間を短縮して余った時間を他のことに使いたいから」を挙げた。
倍速視聴して感じたことを尋ねたところ、「効率よく学習ができた」と答えた人が最も多く8割超いた。またワクチン接種や感染予防策の徹底で復活しつつある対面授業について「授業が長く苦痛に感じる」と答えた人が4割以上いた。
オンライン授業を倍速視聴している人の中で、ユーチューブなど動画配信サイトの動画や映画・ドラマも倍速視聴していると答えた人は38人、4割弱だった。倍速視聴する理由を複数選択可で尋ねると「視聴時間を短縮して、余った時間を他の動画や映画を見ることに使うから」「倍速視聴しないと時間がもったいなく感じてしまうから」がそれぞれ6割以上と多かった。
趣味の動画でも倍速視聴するこれらの人に「倍速視聴をいつから始めたか」を問うと、6割以上の人が大学生になるより前からと回答した。始めた理由を記述式で尋ねたところ「(苦手な話し方の人でも)倍速ならば違和感なく聞けることに気づいたから」「受験生時に息抜きとして使っており、罪悪感はあるため、せめて時間を短縮しようと考えたから」「(早送りでも)案外内容を聞き取れることに気づいたから」などという声があった。
一方で、大学のオンライン授業は倍速視聴しても、趣味の動画はしないという人は6割超と多数派だった。その理由を複数選択可で尋ねたところ、映画やドラマを倍速視聴すると「作品の良さが失われてしまうから」が7割超で最多。また授業の音声を早送りで聞いても問題は感じないが、映画やドラマでは「音声や動きに違和感が生まれるから」が4割以上いた。
「Z世代」と称される最近の若者は、費用対効果(コストパフォーマンス)ではなく、かけた時間に対する効果、タイムパフォーマンス(時間対効果)を重視する傾向があるという。オンライン授業の視聴法からは確かにそうした傾向が見て取れる。しかし、時間的な効率がすべてというわけではなく、趣味や娯楽については尺を縮めず、じっくりと鑑賞している人がまだまだ多いということがわかった。【明治大・奥津瑞季】