すたこら 思い出の食堂(竹中)

すた・こら

 先日、昔から東京・早稲田で学生や地域住民に愛され続けていた食堂「メルシー」が、店主の高齢化などの事情で一時的に閉店してしまった。「安い」「うまい」「早い」の3拍子がそろうこの中華料理店は、学生の頼もしい味方だった。

 私もこの店を先輩から教えてもらって以来、週に1回はサークルや授業の帰りに通った。古い内装と店内に響くラジオの音や「ご自由にお取りください」と書かれた雑誌の山。昔ながらの温かい食堂の雰囲気が残っていて、せわしない大学生活に落ち着きを与えてくれる。夕方になると煮込みすぎて少し濃くなるラーメンのスープも実に人間味があふれていてほっこりする。このような、「おいしい」以外にも愛される要素がたくさんあることが、この早稲田という街で50年以上続けてこられた理由なのだろう。

 早稲田には「メルシー」をはじめとして、昭和の時代から学生に愛され続ける飲食店が数多くある。しかしそれらのお店の多くは店主の高齢化や後継者不足で、閉店の危機にあるという。すでに閉店したお店も多々ある。早稲田が大好きな私としては、思い出の詰まったこの場所がどんどん変わっていくかもしれない、という事実がとても悲しい。

 メルシーは幸い、関係者の努力もあって営業を再開することができた。その他の思い出のお店も、同じように存続できるよう何かできることはないだろうか。卒業まであと1年半という短い時間ではあるが、その中で考え続けたいと思った。【早稲田大・竹中百花】

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