読見しました こんな日もある

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毎日新聞 2021/2/9 東京夕刊

 ダメなときはなんでもダメだ。友達とうまくいかずにイライラして、わだかまりを残したまま別れてしまった。モヤモヤしたまま、家でキーボードをたたいていたら、パソコンが急にフリーズ。気分転換になると思っていた週末の予定が、急になくなった。お気に入りのカーディガンは、袖がほつれている。

 気晴らしに夜道を歩こうと外に出ると、タバコを吸いながら路地に群がる男の人たちが、ジロジロとこっちを見てくる。コンビニで買ったメンチカツがおいしくない。店を出ようとしたら、自動ドアには、クモがはっている。スマホの充電が切れた――。

 数時間のうちにこんなに嫌なことが重ならなくてもいいのに。一つ一つの出来事は小さいことでも、今のわたしにはしんどい。ズキリとした痛みがじんわりと伝染していくように、体の中を巡る。あーあ、とため息を漏らしながら夜空を見上げると満天の雲。なんで空までこんなに重苦しいのかなと思う。悲劇のヒロインを気取るつもりはないけれど、こんな時はきれいな星空に励まされたかった。

 と、その時。雲のすき間からチラチラと星が一つ見えた。なぜか目に涙がたまってくる。沈んでいてもどうしようもない。ブルーな気分は寝て忘れよう。涙はきっと、冷たい風のせい。【上智大・川畑響子、イラストは東洋大・荻野しずく】

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