すたこら:数学をもう一度

 「どうして数学を選んだの?」。大学の専攻を答えると決まって、驚いたような、困ったような表情で聞かれる。「大学で数学を学んだって役に立たない」と言われている気さえした。3年目になるが、いまだにうまく説明できない。

 小学生の頃からだろうか。思考の海を漂う、自分だけの時間が好きだった。解けもしない難しい問題集を親にねだって買ってもらい、問いを選んでは何時間も考えていたっけ。

 決して数学が得意なわけではない。高校の定期テストで赤点をとったこともあるし、授業がさっぱりわからないこともしばしば。その一方、目を輝かせて魅力を語る人に出会うたび、数学によりひかれていく自分がいた。この人たちが見ている世界を見てみたい。そんな憧れが捨てきれず、大学で一から学ぼうと決めた。

 しかし、大学で知ったのは虚無だった。新たな世界に触れるたび、自分の学んでいることが無意味に思えた。あんなに輝いて見えた数式も、ただの記号の羅列に見えてくる。好奇心は何よりの原動力だったはず。だが「好き」を理由にしてしまうと、いつか苦しくなるのだ。

 そんなとき、決まって手に取るのは、これまで使ってきた参考書や解答を記したノートたち。そこには思考の跡がしっかりと残されていた。この時間がいかに崇高だったか、社会に出て気づく時がきっと来る。だからあと1年、向き合ってみよう。純粋に思考を楽しんでいた頃の自分を、もう一度見つけることができるかもしれない。【津田塾大・畠山恵利佳】

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