食品ロス削減、学食から 東京農大生協

 まだ食べられるのに廃棄される食品、「食品ロス」。先月1日に「食品ロス削減推進法」が施行されるなど、削減への機運は高まりつつある。そんな中、学生食堂での食品ロス削減に動き出した大学の取り組みを取材した。【一橋大・梅澤美紀】


企業と連携

 推進法が施行された10月1日、東京農業大学世田谷キャンパス(東京都世田谷区)で、食品ロス削減の事業に取り組む企業と連携し、アプリを使って生協食堂(学食)から出る食品ロスを減らす試みが始まった。

 「TABETE(タベテ)」というこのアプリを運営するのは、コークッキング(東京都港区)。飲食店がその日に廃棄になりそうな料理をアプリ上に出品し、消費者は通常より安い価格で購入することができる。既に計約400店舗が登録されているが、大学との連携は初の試みだ。

 同大の学食での仕組みはこうだ。閉店の約1時間半前になると、夕食のビュッフェで余りそうな料理を容器に詰め合わせ、アプリ上に出品。出品された商品には、価格・在庫数・引き取り可能時間などの情報が掲載される。消費者は購入個数と引き取り予定時間を入力し、ウェブ上の事前決済で購入手続きを完了させる。その後、引き取り予定時刻までに学食に行けば商品を受け取ることができる。

海外と意識差

 アプリ導入の旗振り役となったのは、同大国際食料情報学部国際農業開発学科の准教授・入江満美さん。きっかけは2年前のデンマーク留学だった。「『価値のあるものを最後まで大切にする』というマインドが人々の間に浸透していた」(入江さん)。それだけに帰国後、日本で捨てられる食品の多さにショックを受けたという。「日本の消費者のマインドを変えたい。まずは大学から」。そこで思い出したのがデンマークで自身も使っていたフードシェアリングサービス。その日本版がTABETEだ。

 この提案にのったのが、同大の生協。ビュッフェ用に多めに作る料理の廃棄をどう減らすかが課題だった。学食から出る食品ロスは月約200キロ。このうちビュッフェから出るものが約130キロだ。生協の専務理事・小山道明紀さんは「食について学ぶ大学の学食として、食品ロスの削減をめざす提案に少しでも貢献しなければという気持ちがあった」と話す。

割引出品で完売

 TABETEに出品される商品は一つ400円程度。通常価格のおよそ4割引きの値段だ。1日あたり3~5品出品している。利用者は学生や教職員、大学付近で働くビジネスマンなど幅広く、ほぼ毎回完売。導入から1カ月間での提供数は、計49品にのぼった。

 今月上旬、平日の夜6時半ごろに同学食を訪れると、店員がビュッフェの料理の中から選んだ6種類ほどのおかずとご飯を容器に詰め合わせていた。15分後、受け取りに来たのは同大大学院農芸化学専攻の渡戸捷平さん。TABETEを利用するのは2回目だという。「夜遅くまで研究室にいると、途中でおなかがすく。安く買えて、しかも食品ロスの削減にちょっと貢献できるというので、いい仕組みだと思う」

他大学も注目

 しかし、それでも廃棄をゼロにすることは難しいという。原因の一つが品切れ防止策。従来、閉店まですべてのメニューにおいて一定量以上はそろえておくことを心掛けてきた。品ぞろえの悪さが店のイメージダウンにつながることを避けるためだ。「閉店まで料理が品切れしないようにすると、廃棄が出てしまう」(小山さん)

 このような課題も踏まえ、生協職員と教職員、有志で集まった学生が週1~2回、学食の一角で食品ロス対策について話し合う。品切れを良しとする意識を浸透させる方法、調理をやめるタイミング、必要な分のみの調理にとどめるため食事を予約制にする提案など、さまざまな意見が交わされる。「生協は学生も含め学内のみなさん一人一人が組合員。一緒に議論しながら進めていきたい」と小山さんは話す。

 同大には、生協以外にもコンビニやパン屋など、複数の飲食事業者が存在する。「学食を出発点に、いずれは全学的な取り組みになれば」と、入江さんは今後の展開に期待する。また、同大の取り組みに着目し、他の大学から「参考にさせてほしい」と問い合わせも来ているという。

 教職員、生協、学生、企業が連携して取り組む同大の食品ロス対策。学べるところは大きいのではないか。

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