私が幼い頃、両親はよく絵本の読み聞かせをしてくれた。おかげでテレビでアニメを見るより、本を読むのが好きな子どもに育った。小学生の頃は「遊び=読書」であり、暇さえあれば父に「何か面白い小説はないか」と付きまとっていた。中高時代には学校の図書室で本を借りすぎて、「貸出冊数が多いランキング」の学年1位を取ったほどだ。
しかし、大学に入学してから読書量がめっきり減ってしまった。きっかけは大学受験だ。「得意な現代文で点数を稼ぐために、もっと速く読まなくては」と速読の習慣がついてしまい、できる限り短い時間で要点だけを読み取るようになっていたのだ。もちろん内容を楽しむ余裕などなく、次第に長い文章に目を通すこと自体が、あまり心地のよいものではなくなっていた。
こうして生まれた読書への苦手意識は、まだ直っていない。本を開いてもなかなか進まないから困っている。すてきなカバーにひかれて手に取った小説も、ページをめくるたびに「あ、今文字をただ追っているな」と気が散って、作品の世界にのめり込めない。
それでも私は、読書の楽しさをまた経験したいのだ。自分が知らなかった世界を、ページをめくるだけで知ることができるのはとても魅力的だから。私のことをいまだに読書家だと信じてやまない旧友は、「お薦めの本があったら教えてね」と言ってくる始末。幼い頃に養ったはずの読書感覚、どうしたら思い出せるだろうか。【早稲田大・山本ひかり】