この夏、長く険しい就活が終わった。言葉を尽くしても伝わらず、存在している意味などないと突きつけられる日々は、想像以上に苦しいものだった。それでも最後まであきらめずに頑張れたのは、ある一つの出来事が私を支えてくれたからだ。
それは、就活の面接が始まった頃のこと。周りにはつらい姿を見せたくないとみえをはり、アルバイトは休まずに続けていた。しかし初めて不合格の通知をもらった時、自分のふがいなさから心が折れそうになっていた。
「大丈夫だよ、頑張れ!」。そんな私を見かねて、その言葉とともにアルバイト先の社員さんが渡してくれたのが、一つのミカン。それは、たまたまおすそ分けしてくれただけで、特別に用意してくれたものではない。しかし、人からジャッジされ、否定された気持ちになっていた当時の私には、ほんのりと甘くてすっぱいエールが何よりも心にしみた。
小さくて、本当にささいな出来事。しかし、あのミカンと就活の記憶は、私をきっとこれからも支えてくれる。
今度は、私も誰かにそっとミカンを差し出せる側になれたらいいなと思う。【早稲田大・今給黎美沙、イラストは東洋大・荻野しずく】