読見しました つましさとの惜別

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イラスト=上智大・古賀ゆり

 私が通う大学の近くに、おしゃれなベーカリーカフェがある。1年生の春、大学のガイダンスで知り合った友達に誘われ、そのカフェでランチをすることになった。入学後に初めてできた友達から誘われたことがうれしくて、軽い足取りでカフェに向かった。

 しかし、入店直前にメニューを見て驚いた。ランチセットは1200円もする。学食でのランチ代の2倍以上だ。でも知り合ったばかりの友達に高すぎるとは言い出せず、結局入店した。確かにおいしかったが、入学早々、身の丈に合わないぜいたくをしている気がして何となく落ち着かなかった。

先日、偶然その店の前を通り過ぎ、何気なくメニューを見た。2年生になった今は、おしゃれな店な割にお手ごろな値段だと感じた。そう思った次の瞬間、値段の高さに驚いた1年半前の自分を思い出し、がくぜんとした。

 この1年半を振り返ると、アルバイトで少しずつお金がたまり、たまにプチぜいたくと称して甘いものを食べに行くことも習慣になっていた。自他ともに認めるケチだった私も、金銭感覚が変わってしまったようだ。

 1年半前の、1000円超のランチを後ろめたく感じたあの感受性を取り戻したい。ぜいたくを楽しむのではなく、つましい生活の中にも豊かさを見いだせる自分でありたいからだ。そう願っても、もう時すでに遅しだろうか。【上智大・古賀ゆり】

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