私は交換留学制度を利用し、韓国・ソウルの慶熙(キョンヒ)大学で今年2月から1年間の留学生活を送っている。
留学を目指し動き始めたのは去年の1月。幼い頃から韓国の歴史や文化への関心が高く、いつか現地で学んでみたいと強く思っていた。それは、私自身が在日コリアン4世として日本で生きてきたからだ。
約百年前、私の曽祖父は朝鮮半島の慶尚北道から現在の横浜市鶴見区に職を求めて渡日した。日本と韓国の両国にルーツを持つ私は、自然と日韓関係に強い関心を持つようになった。
曽祖父が渡日した背景には何があったのか? 在日コリアンという存在が、韓国でどれほど認知されているのか? 何よりも在日コリアンとして小中高で朝鮮語を習い、朝鮮文化を大事にする家族と暮らしてきたにもかかわらず、私は朝鮮半島に一度も足を踏み入れたことがなかった。
モヤモヤを解消するためには、実際に現地まで足を運び、学ぶ必要がある。中央大学に進み、ようやく渡航の実現に近づいたと思ったが、その矢先、コロナ禍によって留学そのものが途絶えてしまった。しかし昨年から収束の兆しが見えはじめ、とうとう留学への道が開かれたのだ。
日本と韓国は地理的に近く、歴史的にも交流が盛んだったため、文化が似通っている。例えば、韓国語の文法的な構造は日本語とほぼ同じと言って差し支えない。ただ間近で接して初めて幅や奥行きの違いに気づくこともある。そんな韓国文化の中でも今回は、食文化について取り上げたい。
韓国料理が日本でも非常に人気が高いのはご存じだろう。キムチやビビンバ、冷麺など、例を挙げたらキリがないほどだ。同じように韓国でも日本料理の人気は高い。ソウルの街を歩いていると、至るところでうどんやとんかつといった日本料理のお店が目につく。
でも、韓国の日本料理はちょっと変わっている。これは日本料理だけに言えたことでないが、店で出てくるどの料理も全て辛いのだ。韓国料理と言えば激辛料理でおなじみだが、本場の辛さは日本の韓国料理とはレベルが違う。その韓国ではオムライスなど、本来は辛くない日本の料理までピリ辛に味付けられている。辛い料理が苦手な私にとっては死活問題であった。
当初は韓国料理の辛さに戸惑いを隠せず、実際に慶熙大の友人たちが平然と食べている中で、私だけ食べきれないことが多々あった。「韓国では辛い部類に入らない」と言う友人に、私はあぜんとした。
しかし、食べる回数を重ねるごとに舌が慣れてきたのか、おいしいと感じるようになり、今ではすっかり激辛料理のとりこだ。韓国には「入郷循俗」という言葉がある。日本的に言えば「郷に入れば郷に従え」。他の地方に行った時は、その地方の風習に従うべきであるという意味だ。韓国を訪れた際は、辛いと言って敬遠するのではなく、ぜひ本場の激辛料理を味わってほしい。【ソウルで朴泰佑】(この記事は不定期連載です)