就活最前線 学生座談会 早期化に戸惑い、違和感

就活最前線

 近年、大学新卒者の就職活動が一段と早期化し、大学3年生になるとすぐに就活の準備を始める学生が増えている。早まるばかりの就活は、学生にどのような影響を与えているのか。首都圏の大学に在籍する就活中の4年生2人と、これから就活に向けて動き出す3年生3人に語り合ってもらった。【司会・まとめ、明治大・奥津瑞季】

ルール空文化

 ――本来の就活ルールでは選考の解禁はこの6月ですが、就活中の4年生にお尋ねします。実際はどうでしょうか?

A 企業も学生も動きが早い。友人の中には早期選考で内定をもらい、すでに就活を終えた人もいる。そういう人は3年生の夏前から説明会やインターンシップ(就業体験)に参加するなど、かなり早くから動いていたと思う。

 B インターンは重要。参加することで早期選考の枠を獲得できるケースがあるから。でも競争倍率が高いので、3年生の夏前から準備を始める必要があり、早期化を実感した。

――3年生も早期化していると感じますか?

 E 3年生になっていきなり、大学で参加必須の就活のガイダンスがあった。エントリーシートの書き方やインターンの参加の仕方などを教わったが、まだ進級したばかりなので実感がわかなかった。

 C 私の大学では就活支援があまりないので、まだ自分から動けていない。でも周りにはもう準備を始めている人もいるので、少し焦りを感じる。

授業に「しわ寄せ」

 E 就活の早期化でしわ寄せを受けたと思うことがあるか、いい機会なので4年生にぜひ聞いてみたい。

 A 就活で予定が入れば大学の授業を欠席しなければならない。公欠扱いとして考慮してくれる教授もいるが、期末テストがある授業だと、休んだ日の講義内容は後から友達に教えてもらわなければならないなどの苦労があった。

 B 1、2年生の時にコロナ禍で海外に行けなかったので、3年生で留学を考えていたが、就活が遅れてしまうのではないかと考え、踏み出せなかった。

C サークルの活動などまだ力を入れてやりたいこともたくさんあるのに、就活のせいで諦めなければならないのは嫌だ。

 ――4年生にお聞きします。実際いつから就活を始めましたか? 

 A 3年の夏ごろまではほとんど動けていなかった。教職の講義をとっていたこともあり、平日はかなり忙しく、時間がなかった。早期化に合わせて行動している人が周りに多い中で、焦りを常に感じていた。教職をとっている学生にとって就活早期化に対応することは難しいと思う。

 B 私も3年の夏までは就活を自分のことと考えられず、秋ごろからやっとエントリーシートを書いて、インターンに参加し始めた。夏からのインターンもあったので、もう少し早くから動き出せばよかった。

 E まだやりたいことがあやふやな中で、早期化に対応して、早く自分に合う企業を絞らなければならないとは……。

 C 私も聞いてみたい。就活において、やっておいてよかったこと、逆にやらなくて後悔したことは?

 A 「ガクチカ」と称される「学生時代に力を入れていたこと」のネタを作ることは、やっておいてよかったと感じる。主体的に行動した経験について、就活の中で必ず聞かれるから。

 B 友人の中には、コロナ禍で思い描いていた学生生活が送れず、ガクチカがなくて苦しんでいる人が多い。逆に、やってこなくて後悔したことは、自己分析。就活の早期化に合わせて早いうちからコツコツ、自分自身をもっと振り返る必要があった。

せかされる「選択」

 ――皆さんにお聞きしたいのですが、就活早期化の動きに対して率直にどんな思いを持っていますか? 

 A 早期化で早く就活を終えることができ、卒論ややりたいことに時間をかけられるメリットもあるのかな、とは思う。でも私は、早期化には反対。教員を目指す選択肢がある学生にとって、教育実習にも行っていない状況で民間企業か教員かを選ぶことは難しい。一生に関わることかもしれないのに、そんなに早く決めてしまってよいのだろうかという思いが強い。焦らずにもっとじっくりと自分の将来を考えたかった。

 B 私も断固反対。基礎・教養課程を終えた3年生は自分の興味を広げたり、深めたりするのに一番動きやすい時期。なのに就活で時間がとられてしまうのはよくないと思う。

 D 私は、将来のことを考える時間が増えるから早期化には賛成したいと考えていた。しかし今日4年生の話を聞いて、早いからといって自分のペースで進められるわけではなく、弊害の方が大きいのではないかと感じた。一生に関わることだから、もっと時間をかけて考えたい。

 ――ありがとうございました。


参加者プロフィル

A=4年生・文学部(就活中)

B=4年生・政経学部(就活中)

C=3年生・文学部

D=3年生・文芸学部

E=3年生・文芸学部

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