うつむきながら街中を歩いている時のことだった。チラシを持った、凜(りん)とした顔つきの若い女性が私に向かって走ってきた。必ず受け取っていただきますよ、という無言の圧力を感じておとなしく受け取ると、そこには大きな文字で「高校受験、一緒に頑張りましょう!」と書かれてあった。学習塾の案内だった。
思わずそのチラシを二度見した。きっと彼女は、伏し目がちにとぼとぼと歩いている私を見て、この子はきっと勉強がはかどっていないと感じたのだろう。自分が中学生に見られていたことにかなりの衝撃を受けた。そして同時に、「私に子どもはいませんよ」と、にっこり笑って切り返せなかったのを悔しく思った。
小柄で童顔である私は、以前から実年齢より年下と思われることが確かに多い。居酒屋へ入店する際は私だけ必ず年齢確認をされ、成人であることに驚かれる。背の高い友人からは「小柄な女性は小動物みたいでかわいい。若く見えて羨ましい」と言われる。でも私には嫌みにしか聞こえない。
誰にでもコンプレックスはあり、揶揄(やゆ)されることを嫌う。内面を知らぬまま人を見た目で判断しないでほしい。常々そう考えていた。でも、その内面で私はどの程度大人で、大人として振る舞えているのだろうか。そんなことを考えさせられた出来事だった。【成城大・新井江梨、イラストも】