【ウェブ限定記事】大学生が語り合う男女格差問題 「内なる偏見・先入観」への気づきも(明石)

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 8日は「国際女性デー」。女性の地位向上や男女平等の実現を訴える国際デーだが、その理念は日本社会にどこまで浸透しているだろうか。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長による、女性蔑視発言は記憶に新しく、女性への差別意識が社会に根強く残っていることを浮き彫りにした。男女間の不平等=格差問題について、若い世代はどう考えているのか。本紙火曜夕刊「キャンパる」(東京版)に所属する学生記者が、オンライン座談会で率直に語り合った。【司会・まとめ、立教大・明石理英子】

 ――普段、男女格差について意識するのはどんな時ですか?

 A SNSで広く社会問題について発言する若い方々が、男女差別の解消を訴えているのを目にした時に意識する。

 B 女子大に通っているため、女性のキャリアに関する話を授業で聞く機会が多く、よく考える。

 C ニュース番組で取り上げられているのを見た時に、自分も意識する。

 D 大学のゼミで、女性のキャリアについて扱った時に考えさせられた。

 E 大学でメディア学を専攻しており、メディアが押しつけてくる、男女の役割に関する固定観念を問題視している。

森氏発言「軽率な発言だと思った」

 ――森前会長の女性蔑視発言を聞いた時の、皆さんの率直な感想を教えてください。

 B 軽率な発言だと思った。あの発言は、本心から出たものだったのか、冗談のつもりだったのか気になった。

 E 過去の失言もあったため、特に驚きはなく「またか」という印象だった。

 A 森前会長の世代に、そのような考え方をする人が多いことを知っていたため、私も驚かなかった。だが、男女平等に対する世間の認識との温度差を感じた。

 C 女性に対する差別意識を、今も持っている人がいるということに気づかされた。こういった発言をする人がいなくなるよう、社会がもっと変わるべきだと思った。

 E でも、この発言が大きく問題視されたのは、男女平等への意識が高まっているという証拠なのではないか。

 D たしかに。発言に対して僕もあまり驚かなかったが、会長という立場で差別発言をしてしまったのは問題だと思った。

 ――皆さんは、普段の生活で男女間の不平等を感じたことはありますか?

 B 中学・高校時代に所属していた部活では、整列する時に、女子は男子の後ろに並ぶのが決まりだった。性別で並び順が決まることに疑問を抱いていた。

 A 実体験として不平等を感じたことはないかも。でも母親より上の世代には、今でも女の子より男の子の誕生を望んでいる人がいると聞き、年配層では男尊女卑の考え方が根付いているように感じた。

 ――男女間の不平等が生み出される原因として、ジェンダーに基づく偏見や先入観が挙げられます。こうした偏見を押し付けられた経験や、反対に自分が先入観にとらわれていた経験はありますか?

 A 就職活動中に企業の面接担当者から、女性は将来、家庭に入ることを前提に話をされたが、自然に受け入れてしまっていた。家事や育児は男女に関係なくやるべきだと思っていたはずが、心のどこかで女性の仕事だと捉えていることに気づいて、はっとした。

 C 以前、化粧品を使う男性が増えているという話を聞いて驚いた。その時に、化粧をするのは女性だけだという固定観念を持っていたことに気づいた。

 D そういった固定観念は、「男らしさ」や「女らしさ」を強調する広告などが作り上げているように思う。

「ジェンダーへの理解が足りない」

 ――日本で男女間の不平等がなくならないのは、何が原因だと思いますか?

 A 海外留学の経験を踏まえて言うと、日本人は感情をあまり表に出さないように感じる。そのため、不平等に違和感を覚えても声を上げにくいのではないか。

 B 男尊女卑が当たり前だった社会を生きてきた世代が、考え方を改めていないことも原因の一つかもしれない。

 C 僕はジェンダーに対する理解が足りないように思う。その原因の一つとして、ジェンダーの多様性や男女格差問題に対する、学校での教育の遅れがあると感じる。

 ――それでは男女平等の社会を実現するために、今の社会が変えていくべきことは何だと思いますか?

 E 男女平等を目指す制度はあるが、いまだに格差はあり、理想論になっているのではないか。例えば、国政におけるクオータ(女性への議席・役職の割り当て)制の導入など、今の社会に即した制度設計へと見直すべきだと思う。

 B 産休や育休から復職する際に、負い目を感じたという女性の話を聞いたことがある。制度だけでなく、産休や育休を取得する女性に対する周りの理解も、必要だと感じる。

 ――最後に、男女平等の社会の実現のために、大学生である皆さんが意識していきたいと思うことを教えてください。

 E 今回の座談会のように、この問題についてみんなで話し合うことが重要だと思う。

 A 私は、ジェンダーに基づく偏見や差別意識を気づかぬうちに持ってしまっていないか、自分で気づけるよう意識していきたい。

 D たしかに自分で気づくことは大切。今まで、自分の持っている偏見について気にしたことがなかったため、これを機に僕も考えていきたい。

 ――私も、男女格差の問題をもっと自分の問題として、考えていくことが必要だと思います。ありがとうございました。

<参加学生のプロフィル>

A=私立大社会学部4年・女子

B=私立女子大文学部1年・女子

C=私立大経済学部3年・男子

D=私立大経済学部2年・男子

E=私立大法学部1年・男子

大学生が語り合う男女格差問題 「内なる偏見・先入観」への気づきも | 毎日新聞
8日は「国際女性デー」。女性の地位向上や男女平等の実現を訴える国際デーだが、その理念は日本社会にどこまで浸透しているだろうか。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長による、女性蔑視発言は記憶に新しく、女性への差別意識が社会...
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