新型コロナウイルスの影響が、卒業式の中止など学生にも及んでいる。なかでも、企業の説明会が中止になるなど、就職活動への波及は大きい。キャンパる編集部は、就活生へ緊急アンケートを行いその影響を調査した。また、大手就活サイトを運営するリクルートキャリアと、マイナビの担当者に話を聞いた。(カッコ内は大学名・性別・志望業界)【東洋大・佐藤太一、写真は法政大・平林花】
説明会中止、ウェブ面接 企業側の表情見えない
アンケートに回答した就活生(全員2021年春卒業予定者)は35人。
自身の就活に新型コロナウイルスの影響があったと答えたのは全体の8割。そのうちの8割以上(以降複数回答)が「学内の合同説明会がなくなり、企業と出合う機会が大幅に減少した」(滋賀大・男・メーカー)など、「説明会が中止・延期になった」と回答した。
また、3割以上が「面接が中止・ウェブ面接に変更になった」「インターンシップが中止になった」と回答。このほかにも「合宿スタイルの研修が日帰りになり、内容が薄くなった」(法政大・女・広告業界)など、人の多く集まるイベントの自粛が増えていた。
このようなイベントの中止については、6割が感染を懸念し、「中止が望ましい」と理解を示したが、4割は「開催が望ましい」と回答。「自己判断でよいと思う」(東京大・女・メーカー)といった、個人の判断に委ねるべきだとの意見が見られた。
また、増加が予想されるウェブ面接については、回答者の全員が「対策をしていない」と回答。「面接だけはウェブにしないでほしい」(法政大・女・不動産デベロッパー)など、未体験のウェブ面接に対する不安の声が目立った。
そのほかにも、「早期選考が延期されて4月以降の選考が増えた。本命に集中できないかもしれず不安」(上智大・女・航空業界)、「面接の時に面接官がマスクを着用していて、表情が分かりにくかった」(津田塾大・女・マスコミ)など、不安の声は多岐にわたった。
企業に対しては、説明会や選考自体の延期を求める声が多く、「就活を一時止めてほしい。企業研究もできていないのにエントリーシートで志望動機は書けない」(法政大・女・マスコミ)という切実な声も上がった。
感染防止を第一に決断 リクルートキャリア
リクルートキャリアは2月20日に、3月末までの就活準備イベントや合同企業説明会を全て中止すると発表した。同社は、就活サイト「リクナビ2021」を運営する。参加を予定していた企業は延べ5000社、来場者は3万人から5万人を見込んでいたというが、感染防止を最上位に置き、中止を決断した。開催を予定していたイベントは44都道府県で計91件。新卒メディア統括部の大家(おおいえ)純一さんは「開催して感染者を出したら一生後悔すると思い、決断した」と語る。
説明会の中止で影響が強く出たのは、人手不足の中小企業や地方の企業。学生の認知度が低い企業は、イベントへの出展ニーズが高く、会場での偶然の出会いを大事にする傾向があったが、イベント中止によってそれが難しくなったという。
対策も講じている。感染防止のために、現時点で説明会や選考の対応を明記している企業を一覧化、現在は5000社以上が掲載され、サイトのトップページからワンクリックでアクセスできる。
アンケートで不安の声が多く挙がったウェブ面接について就職みらい研究所所長の増本全さんは、「形式が変わっても、企業の評価基準が変わるわけではない。今まで通り、どれだけ経験や意欲を語れるかが大事」と語った。
今できることに時間を マイナビ
就活サイト「マイナビ2021」を運営するマイナビは、2月26日に、3月1~15日の合同企業説明会の中止を発表。マイナビ編集長の高橋誠人さんによると、国の専門家会議が発表した「今後1、2週間が山場」という考えを踏まえたという。さらに、3月9日には、合同企業説明会の3月31日までの中止も発表。新型コロナウイルス感染拡大の状況が変わらないことが理由だという。
3月全体で前年は延べ約23万人の学生が来場し、今年は開催数222会場、出展予定数延べ約1万5800社を予定していた。なかでも高橋さんは、リクルートキャリアと同じく、ITや医療、福祉など、人手が不足している業界への影響が特に大きいのではとの考えを示した。
3月1日にはウェブ上での合同説明会「マイナビ就職 WEB EXPO」を開催したほか、6日からは「イベントで会えなかった企業のWEBセミナー」と題し、100社以上の企業が自ら撮影した自社紹介の動画を公開。企業を詳しく知る場を設けている。
高橋さんは「企業の担当者に直接会えない状況でも、自己分析や自己PRのブラッシュアップなど、今できることを行うことで不安を解消できるのではないか」と話す。マイナビ2021のサイトでは、「就活支援」ページに業界研究や適性診断などのコンテンツを充実させているとし、説明会中止で生まれた時間をポジティブに活用してほしいと強調した。
両社とも、今後の対応は感染の状況を見守りつつの判断になるという。また、今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって、図らずも、採用活動のウェブ化が進む可能性があるとの見解も共通だった。今年だけでなく今後の就職活動にも影響を与えるかもしれない。