2019/07/02 すたこら

ほめるということ

 小さなころから、人をほめるのが苦手だ。ほめてもらうことが大好きなはずなのに、立場が変わるとどうしていいかわからなくなる。例えば、髪を切った子がいたとき。誰かが発した「似合うね」という言葉に同調し、周りの子も声をかける様子をよく目にする。みんな、そうするのが当たり前だと思っているようだ。

 本当によいと同意できたときはいい。問題はそうでないときだ。空気を読んだ態度をとることもできる。だがその行為は、自分にうそをつくようで抵抗があった。だからといって相手を否定する勇気もなく、黙っていることしかできない。このまま、自分を一番に優先していていいのか。本心を押し殺してでも、相手を思いやるべきではないのか。愛想笑いでその場をやり過ごすたびに葛藤した。

 そんな考えが迷走していたあるとき、久々に会った高校時代の友だちの言葉により一筋の光がさした。「あなたにほめられるとうれしい。本当に思ったことしか言わない人だから」。厄介だと思っていた性格を、前向きに受け止めてくれる人がいる。感情をまっすぐ伝えてくれる彼女だからこそ、感動が胸を満たした。

 誰かのご機嫌取りにはなりたくない。正直すぎる言動は、相手を傷つけることも知っている。それなら、白黒はっきりしないことも立派な対応だ。きっと私はこれからも、そう切り抜けていくだろう。だけどその分、いいところを見つけたとき、心の底からの思いを伝えたい。それが、一番私らしいほめ方だと思うから。【早稲田大・廣川萌恵】

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