スタートライン
就職活動が実質中盤にさしかかり、母と仕事の話をすることが増えた。話している中で何よりも一番驚いたのは、自分の年には母がもうバリバリ働いていたということだ。
幼い頃は、20歳の頃には成熟していて、なんでも知っている「すごい大人」になれていると思っていた。でも、実際はどうだろう。限られた大学時代は、何かを成し遂げるわけでもなく、友人たちと刹那(せつな)的に遊び、興味のある学問に片っ端から手を出してふらふらしていただけ。会社員として働いていた母と、学生を謳歌(おうか)している私。同じ年齢でも全然違う。急に、母の姿が大きく見えた気がした。
母だけではない。友人の中には、すでに働いていたり、子育てをしていたり、社会人として生きている人がいる。彼女らと同じように、自分も社会に出て闘う覚悟などできているのだろうか。卒業というゴールが迫ってくるにつれ、自分の中にある感情の器が、どんどんと不安で満ちていくのがわかる。
それでも、決して逃げてはいけないのだと思う。企業から「お前はいらない」とお祈りメールではねつけられても、まずはスタートラインに立ち、走りださなくては何も始まらないのだ。そのための第一歩を踏み出すために、自分の全部を分かってもらおうなんて思わない。ただ、その白線に立つために、不器用なりに思いを伝えたい。【早稲田大・今給黎美沙】