すたこら:卒業式

 卒業式には行かない。はかまの案内が届き始めたときから、そう決めていた。

 高校の部活動では周囲とうまくいかず、逃げるように引退。卒業式の後に部の集まりもあったが、顔を出さなかった。卒業という一つの節目に全てを消化して、次のステージへ……なんてことはできず、向き合うことから逃げたという事実がいつまでもくすぶってきた。

 大学こそはと、学内の新聞部で身を削った。しかしここでも後ろめたさの残る形に。どんな顔で卒業式、なにより部の集まりに行けばいいのか分からない。

 しかしその予定は一変した。ある日、大学から送られてきたはかまの展示会の案内を捨てていると、母の残念そうな顔が目に入った。病気で入学式に来られなかった母に「卒業式は来てね」と言ったのは、数年前の私だ。さすがに申し訳なく思い、重い腰を上げて2人ではかま選びへ向かった。

 一緒に大学に行くのは入試以来の母に、街並みを紹介しながら歩く。先輩に連れて行ってもらった飲み屋、編集明けに朝ご飯を食べた定食屋。お気に入りのパン屋は、後輩が取材にも行ってたっけ。思い出はどれも新聞部絡みで、本当にそればかりの4年間だったのだと思い知る。だからこそ、きちんと消化しなければ次に行けない。卒業式の日、あのぼろい部室のドアをたたかなければ。

 後日、雑談の中でそっと、はかまを選んだという話を部の後輩にした。「卒業式の後、来てくださいよ」。その一言が少しだけ心を軽くした。【一橋大・川平朋花】

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