就活最前線 面接練習、AIにお任せ 中央大が新システム導入

就活最前線
中央大学後楽園キャンパスで理系の学生向けに提供が始まった「Chu活ボット」=東京都文京区の同キャンパスで、朴泰佑撮影
中央大学後楽園キャンパスで理系の学生向けに提供が始まった「Chu活ボット」=東京都文京区の同キャンパスで、朴泰佑撮影

 学習データをもとに、あたかも人間が作ったような文章などのコンテンツを作り出す生成AI(人工知能)。就職活動の早期化が進む中、忙しい学業と就活の両立を手助けしようと、この生成AIを就活に利用する取り組みが急ピッチで拡大している。就活生なら誰もが経験する対人面接の練習用に、生成AIを用いた模擬面接練習システムを導入した中央大学の取り組みを取材した。

 同大キャリアセンターは4月、「Chu活(チューカツ)ボット」と名付けた就活面談練習システムを、理工学部の学生を対象に導入した。パソコンを利用する同システムには、3Dアバターと呼ばれる立体的なキャラクターが模擬面接官として登場。この模擬面接官を相手に、音声で自己PRやガクチカ(学生時代に力を入れたこと)のほか、自分が専攻した研究内容についての説明や質問への受け答えなどの練習ができる。Advertisement

 驚くべきはその精度だ。記者も実際に体験してみたが、正確にこちらの音声を認識し、的確な質問を投げかけてくれる。また面接練習だけでなく、終了後、即座に面接の出来について評価し、やりとりの文字起こしまで行ってくれる至れり尽くせりのシステムだ。

 画面上の3Dアバターが相手なので、気楽に練習が行えるというのも大きな利点だ。同大キャリアセンターの五十嵐星汝・理工キャリア支援課長は「いきなり本物の面接官相手だと緊張してしまう。そんな対人面接に慣れていない学生に、本番前の練習としてぜひ体験してほしい」と話した。

 このシステムを開発したのは、昨年3月に同大学大学院理工学研究科を修了したOBの水谷林太郎さんだ。3Dアバターが投げかける質問の種類は非常に豊富で、決められた質問だけではなく、生成AIの強みを生かし、学生の回答に合わせて深掘り質問も考えてくれる。面接の難易度は3段階、練習時間は1分から10分までの4段階に分かれているため、学生のニーズに合わせて無理なく面接練習を行える。

 実際にこのシステムを利用した学生を対象に実施したアンケートでは、「曖昧な発言内容に対して深掘り質問をしてくれた」「本物の面接の参考になった」などの前向きな感想が多く寄せられたという。記者自身も、就活で大きな助けになるという印象を受けた。

 このシステムは現在、1日3組限定で提供されている。今後はオンラインでより多くの学生が利用できるようにしたり、エントリーシートの添削などサービス内容を充実させたりすることも検討しているという。

 就活の早期化で学業と就活の両立は厳しくなる一方だが、五十嵐課長は「忙しい学生がより実践的に練習を積み、効率的に就活を行えるよう、このシステムを活用してほしい」と話している。現在は理系の学生限定で提供しているが、今後は文系の学生や系列高校の生徒にも広げたい考えで、「Chu活ボット」に更なる可能性を感じているという。【中央大・朴泰佑】

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