なにコレ!? お笑いコンテスト「大学芸会」 実行委、手作りで盛り上げ

10日間かけて行われた予選会。決勝戦進出を決め舞台上で喜びを爆発させる出場者=大学芸会実行委員会提供 なにコレ!?
10日間かけて行われた予選会。決勝戦進出を決め舞台上で喜びを爆発させる出場者=大学芸会実行委員会提供

 「日本一面白い大学生を決める」がコンセプトの大学生お笑いコンテスト「大学芸会 個人戦2023」の決勝戦が8月30日、東京都中野区の「なかのZERO小ホール」で開催された。507の客席は即日完売で、大盛況のうちに幕を閉じた。今、盛り上がりを見せている大学生のお笑い。裏方で支える実行委員会の学生メンバーに、大会についての思いを取材した。【昭和女子大・薄井千晴】

出場希望殺到の人気

 大学芸会は2011年に初開催されて以来、学生対象のお笑いコンテストとしては日本一の規模を誇る夏の一大イベントとして成長してきた。主催するのは、首都圏の大学お笑いサークルの連絡組織「お笑いサークル連盟」。大学生であれば、お笑いサークルに所属していなくても参加できるのが特徴だ。

競う芸は漫才やコント、フリップ(めくり芸)、漫談などさまざまで、各人が考えたとっておきのネタが披露される。今年560組に増えた予選エントリー枠は募集開始から3分もしないうちに埋まり、出たくても出られなかったという人も多く見受けられるほどの人気ぶりだ。

 同連盟の大学芸会実行委員会には、加盟大学のお笑いサークルに所属する学生37人が参加。代表を務める田園調布学園大学4年の細野志月さん(22)は、大学芸会について「学生だけで作っていきたい思いが強くある」と話す。実際、キャッチコピーやポスターなどの制作、音響や照明、会場の手配、進行役となるプロの芸人や決勝の審査員となる構成作家との交渉など、大学芸会を成立させるためのすべての業務は、実行委員会の学生スタッフが主体的に行っているのが大きな特徴だ。

学生だけの運営貫く

 同実行委は、日本一面白いお笑いサークルを決める団体戦「NOROSHI」や、一人芸の学生日本一を決める「学生R―1」も開催している。大学芸会の大規模化に伴い団体部門が独立し、2015年に初開催したNOROSHIは今や大学芸会と並ぶ大規模イベントだが、大学サークル専用アプリ「サークルアップ」や、吉本興業など外部の企業の協力、協賛を得て開催されている。一方で大学芸会は、学生だけによる運営を貫いている。

 「大学芸会」が始まる前は、不当に高額なエントリー料を取るなど運営が悪質なイベントが多かったという。そうした状況に満足できない各大学お笑いサークルの現役部員・卒業生の有志が、自らの手で学生お笑い界全体を盛り上げようという趣旨で始めたのが大学芸会だった。細野さんは「創設時から学生の力だけで運営してきた大会なので、出演者、スタッフ両方が外部の力を借りての運営を望まない限り、学生の力だけで運営したいと考えている」と説明する。

出場希望者は年々増加しており、今年の大会では、エントリー枠拡大の要望を受けて昨年は9日間としていた予選の日程を、1日増やして10日間にした。予選1回当たり56組が参加。決勝戦に行けるのは、客席投票で得票率が高かった上位2組だけという狭き門だ。次いで得票率が高かった3組は敗者復活戦に臨める。

 今年は23組が決勝戦の舞台に進んだ。頂点を決める独特の緊張感と、それを吹き飛ばすようなそれぞれの面白さに観客全員が爆笑し、拍手するさまは圧巻だった。優勝したのは、駒沢大学の「お笑い集団ナイフとフォーク」に所属する「伝書鳩(でんしょばと)」。プロも参加する他の大会でも活躍するなど多くの実績を残している。

コロナの逆風越えて

 新型コロナウイルス感染症が急拡大した20年は大会が中止となり、21年も出場者や観客の数を減らしての開催だった。年ごとにスタッフが入れ替わるため、コロナ禍以前の大会運営ノウハウが十分引き継がれていない問題点もあった。手探りで運営をするなかで、より良い運営をすべく新しいことを導入したり、以前の形に戻したりするのが大変だったという。現在、細野さんを含めた4年生は今後に向けてのマニュアル作りに奔走しているとのことだ。

 コロナの逆風下でも、大学生のお笑いブームはさめることがなかった。その背景について細野さんは「有名なコンテストで学生芸人が勝ち進んだり、プロの芸人から情報発信してもらったりして、『学生でも結果を残すことができる』『夢がある』と感じてこの道に入る人が多いのではないか」と話す。

 首都圏の大学のお笑いサークルのエントリーが多い同大会は、これまで予選・決勝戦はすべて東京での開催だった。しかし関西など首都圏以外の大学でもお笑いサークルは増えつつあり、関西地区での予選開催を望む声も上がっているという。大学芸会の今後について細野さんは「関西支部を作る可能性はあるかもしれない。スタッフの負担との兼ね合いもあるが、大学芸会は今後ますます大きく、全国的な大会になっていくのではないか」と語った。

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