読見しました 褒め上手な父

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 父の話はいつも大げさだ。小さなことも尾ひれを付けてまるで大ごとのように話す。法事など親戚の集まりの場で父が長々と話をした後に、母が「話半分で聞いておいてね」と冗談っぽく口を挟むのがお決まりだった。私も父の話を話半分で聞くようになった。

 そんな父は、人の話や動きに反応するのも大げさ。特に褒める時がそうだ。テストで少し良い点を取った時など、小さな出来事に対しても「立派!」と連呼してよく褒めてくれた。それがうれしくて、褒め言葉だけは話半分にせず、全部受け止めた。褒めて育ててもらったとつくづく思う。

 最近、学生時代に新体操をやっていた姉が、頭と両手で体を支える三点倒立をリビングで披露した。「今でもできるなんてさすが! 努力のたまものだ。立派だよ!」。父のその褒めっぷりが面白くて母に伝えると、父とは対照的に口下手な母の口から、父への褒め言葉が出てきた。「お父さんは人の良さを素直に認められる人だから。大げさだけど本心だよ」。予想外の言葉に、なぜだか私が照れてしまった。

 褒め言葉が大げさでも控えめでも、本心なら気持ちは伝わる。むきになりやすい私は、なかなか他人を褒めることができない。だが褒められればうれしいもの。父や母のように、人の良さを認める素直さを、自分も身につけられたらと思う。【日本大・山口沙葉、イラストも】

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