就職活動も一段落つきそうだ。ほっと一息つく半面、この選択で本当に良いのだろうかと頭の片隅で不安に思っている自分もいる。
「いざ進路が決まると、人生のゴールまで見えちゃった気がして何かあっけないよなあ」。聞いた当時は気にも留めなかった1学年上の先輩の言葉だが、今はその心境が何となく理解できる。何の迷いもなく社会の一部として機能していく。その覚悟ができているか、と問われると自信を持ってうなずけない。まだ何ごとにも縛られずに生きていたいというわがままな自分がどこかにいるからだ。
好奇心旺盛な私は、幼い頃から将来の夢がころころ変わった。女優、ロボット技術者、作家、スポーツ選手、ダンサー……。無限の可能性を秘めていたはずの自分の将来。されど現実は小説より凡なり。成長とともに身の程知らずの選択肢は消え、いつの間にか「将来の夢」という大げさな言葉も使わなくなっていた。
しかしようやく地に足がついた、とも言える。就職活動を通して、ぼやけていた将来像には輪郭がはっきりと浮かび上がり、仕事を通して誰かの笑顔に貢献したい気持ちが芽生えた。そして初めて大人であるという実感が湧いてきている。
先の見えない世の中だからこそ、ゴールは見えているようで、実は一寸先は闇かもしれない。ゴールテープを切るその瞬間まで、何度だって目的地を変更し、振り返った時に若い世代にとって模範にも反面教師にもなり得るような、濃密な人生を歩みたい。【早稲田大・榎本紗凡】