「臆病な詩人」と私
「人が怖いんでしょう?」。以前に知人との食事の席で、何気なく言われた。反論もできず笑ってやり過ごしたが、ずっと引っかかったままだった。
そんな、わかった気で言わないでよ。私の何を知っているの。自分の性格を指摘されるたび、心の中で小さな反発をする。相手に図星を突かれると、全てを見透かされた気がして、とたんに距離を置きたくなる。かといって自己分析を試みても、否定的な感情を増幅させるだけだ。
先日、読書家の友人から本を借りた。「この人、少し似ていると思うよ」。そう言って渡されたのは、文月悠光さんのエッセー集「臆病な詩人、街へ出る。」。詩人である筆者の、日々の小さな挑戦がユーモアたっぷりにつづられた一冊だ。
八百屋さんでの買い物、料理、映画鑑賞、恋愛、アルバイト。皆が当たり前にこなしていることも「臆病な詩人」にとっては試練の連続。その度に自身の性格と向き合い、悩み、自分なりの答えを出す。その過程が、繊細かつ力強い言葉で描かれていた。
小さなことを気にする一方で、肝心の問題からは逃れて言い訳ばかり。一人じゃ何もできないのに、見えっ張りで頑固。受け身型のコミュニケーション。恋愛音痴……まさに自分を表したような言葉に何度も出合う。そうか、私は臆病なのか。
これからは自分の弱さや欠点を、否定も拒絶もしない。それらを含めて、自分を認めることで、その先へ進むことができる。臆病な詩人はそう教えてくれた。【津田塾大・畠山恵利佳】