偽らない個性
「自分が個性的だからか、友達と心から仲良くできない。なんとか自分を偽っているが、毎日楽しくない」。ネット上で寄せられた悩み。送り主は小学生だった。
小学生の頃の自分を思い出してみる。本を読むことが好きだった。クラスメートと校庭で遊ぶよりも一人で本を読むことを選ぶ私は、すぐに「仲良しグループ」から除外された。休み時間は居心地の悪い教室を抜け出し、図書室に向かう。司書のおばちゃんと読んだ本について語り合うのが楽しみだった。
ある日、げた箱から自分の上履きが消えていた。ゴミ箱の奥底から出てきた上履き。まるで私みたいだと思った。自分を偽ってでも人とうまくやっていかないと、この上履きみたいに捨てられる。中学生になってからは図書室に行かなくなった。クラスや部活動で周囲と協調性を保つことに疲弊する日々だった。
学校という世界に縛られることがなくなったのは大学に入ってから。取材や留学、旅を通じて広い世界に目を向けてみたら、自分だけの生き方を楽しんでいる人たちがたくさんいた。
そして私も心から自分が楽しめることを大事にし始めたら、偽らなくても向き合ってくれる人が案外身近にいることに気づいた。
名前も知らない小学生に、返事を送る。「あなたの個性、大事にしてください。時間はかかるかもしれないけれど、魅力に気づいてくれる人は、きっといます」【一橋大・梅澤美紀】