北里大学相模原キャンパス(相模原市)には、学生が企画・運営する全国でも珍しいミニ水族館「北里アクアリウムラボ」がある。運営メンバーは、同大学海洋生命科学部の2、3、4年生の計61人。展示は、常設展と年2回ほど行われる企画展。オープンキャンパスや大学祭に合わせた展示も行っている。
常設展示している魚類や甲殻類などは80個体ほど。内部で飼育しているものも合わせれば約130種、250個体ほどを世話している。「水族館を訪れるお客さんと会話することが普段から多く、生き物に驚いてくれたり、興味・関心を持ってくれたりすることが一番のやりがい」と運営メンバー代表の中市創太郎さん(22)は語ってくれた。
飼育生物の採取は近くの相模湾などで学生たちが自ら行うほか、同学部の研究室に提供してもらう。元水族館職員である顧問の三宅裕志教授のつてで、水族館から提供してもらうこともあるという。
同水族館は本来、岩手県大船渡市の同大三陸キャンパスに2011年5月、開設を予定していた。しかし東日本大震災で計画は一時中断した。海洋生命科学部が現在の相模原キャンパスに移転したことを受け同年7月に仮移転。12年秋の新校舎完成に伴い、新校舎1階に現施設がオープンした。
同学部の研究を分かりやすく伝えること、また水族館業務を学ぶ中で社会での即戦力となる人材育成の施設として計画された同水族館。整備は10~12年、文部科学省の支援を受けて行われた。コロナ禍で一時一般公開を中止したが、できた時間を利用しSNS(ネット交流サービス)による情報発信に力を入れるなど、それまでできなかったことに挑戦できたという。
今秋で現施設の開館から11年経過した。学生主体の運営でも続けてこられたのは、「代々いろんな先輩たちが、この場所を魅力的なものに作り上げてくれたおかげ」と中市さんは言う。三宅教授は「来訪される国内外の要人や入学希望者、地域の小さい子どもまで多くの人が来るようになり、大学の顔になった」と語る。入館料は開設以来無料。大学側の全面支援を受けて継続できているという。
同水族館は三陸との縁を大事にしている。常設展で一番のお薦めは、アマモという海草が生えている三陸の海を表現した大水槽。飼育が少し難しいところもあるにもかかわらず、うまく飼育できているという。「三陸は今も学部がお世話になっているフィールドであり、守るべき環境だ」と中市さんは語ってくれた。
学びを生かして水族館に就職した卒業生も増えてきた。そのつながりを利用して企画展で現役水族館職員を講師に招き、質問コーナーを設けるなど卒業生とのつながりを生かした企画も増えてきたという。
今後の活動について「よりお客さんに楽しんでもらえて、自分たちの思いを伝えられる水族館にしていきたい」と次期代表の新藤想さん(21)は意気込んだ。【日本大・田野皓大】