先日、卒業した高校を1年ぶりに訪れた。中高通算で5年間在籍していた、ミュージカル部の練習を見るためだ。新型コロナウイルスまん延でこの2年間は卒業生も見学が禁止されていたのだが、制限解除の知らせが届いた。同期と約束し、わくわくした気持ちで門をくぐった。
マスク姿のまま踊る後輩たちは、息が上がるし表情も見えにくいのだが、全員が生き生きとしている。練習可能な日程が少ないなど活動が制限される中だが、キラキラした姿に安心するとともに、ふと自分の将来について考えさせられた。
私は大学で、演劇や映画の制作について勉強している。舞台の歴史や作品の背景を学ぶ時間は本当に楽しくて、演出でも企画でも、何かしらの形でいつか関われないかと願わずにいられない。
だが時々、大学で演劇を学ぶことに価値があるのか、不安になる時がある。コロナ禍で、集団感染が起きた劇団や劇場は厳しい批判にさらされた。助成金について演劇人が意見を言うと、「不要不急の活動じゃないか」と反発された。その背後にある「舞台芸術は何の役に立つの?」という冷ややかな問いへの答えを、私はまだ見つけられていない。
それでも演劇は、誰かの力になるはずなのだ。私にとってそうであるように。舞台上で歌い踊る後輩たちを見て、改めてそう感じた。春公演本番まであと少し。「舞台が好き」という自分の原点に気づかせてくれたことに感謝しつつ、彼女たちの晴れ舞台を見守りたいと思う。【早稲田大・山本ひかり】