編集部座談会 受験の重圧、どうだった? 大学はゴールじゃなくて通過点

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 今年の大学入学共通テストを巡っては、東京大学前で受験生を無差別に襲う刺傷事件や、設問を撮影して外部に漏らすカンニング事件が相次ぎ発生。世間を騒がせたことは記憶に新しい。「志望校合格」を巡る心理的な重圧は、時には自らの行為の善しあしの判断がつかないほど、受験生を追い詰めるものなのだろうか。受験シーズンもいよいよ終盤。キャンパる編集部の学生記者に、自分自身の受験体験も含めて語り合ってもらった。【司会・まとめ、日本大・畑山亘】

 ――東大前刺傷事件についてどう思いましたか?

 A 見ず知らずの他人を傷つける行為はけっして容認できないが、事件を起こした少年の、精神的に追い詰められていた気持ちはよくわかる。知識は増える一方、精神が未成熟で視野が狭くなりがちな年ごろだからこそ、冷静な判断ができなかったのかもしれない。少年の不安や孤独に気づいてあげられる人はいなかったのだろうか。

 B ただ周囲が気づいたとしても、本人の気持ちが変わるか疑問だ。私も浪人中に精神的に追い詰められた経験があるが、その時は親からどんな説得をされようが上の空だった。追い詰められた本人は、簡単に気持ちを切り替えることができない。だからこそ、周囲がどう接するか難しいなと感じる。

 ――共通テストの設問を撮影し外部に漏らして答えを得ようとしたのは、いわゆる仮面浪人中の大学生でした。この行為についてどう思いましたか?

 C 私も浪人経験があるが、自分なら浪人してまで受験勉強に取り組んだからこそ、不正行為でその努力を水の泡にしたくないと思う。

 A 周囲の学歴至上主義の風潮が影響したのではないか。だが、不正によって学歴を手に入れたとしても、その先の人生が好転するとは思えない。たとえ受験で失敗したとしても、自分の力で何かを成し遂げる経験を持った人こそ、将来輝けるのではないか。

つらい体験

 ――自分の受験を振り返って、つらいと思ったことについて教えてください。

 A ずっと指定校推薦を目指していたが、高3の秋になって、他の生徒の志望変更によって自分は推薦が得られないとわかったこと。確実視されていたこともあり、ショックが大きかった。でもそうした挫折を味わったことで、一般入試に対して楽な気持ちで臨むことができたように思う。

 D 「勉強しなくてはいけない」と自覚しつつも、集中力を維持して受験勉強をするのが大変だった。

 C 現役時代は、高校が学校行事に力を入れていたこともあって、受験勉強と学校行事とのバランスをとるのが大変だった。浪人時代は、自分と予備校の相性が合わず、体調不良を起こしたこともあった。

 B 私も浪人時代、学歴至上主義的な予備校の雰囲気が自分と合わなくてつらく、予備校に通えないこともあった。

 ――第1志望校に入れなかった方、その時はどんな気持ちになりましたか?

 B 「終わった」と思った。最初は半年で大学をやめようかと思っていた。

 C とても悲しかった。志望校を変えずに頑張っていたこともあって、諦めたくないという気持ちが強かったため、結果に落ち込みふさぎ込んでいた。

 D 入学当初は気が乗らなかった。しかし、行ったなりにやれることはやろうという気持ちはあった。

 ――浪人経験のある方、浪人を決意した理由について教えてください。

 C 入りたい大学があったから。高校が半数程度の生徒が浪人するところだったため、「第1志望に入れなかったら浪人」という雰囲気があり、浪人することにためらいはなかった。

 B 私も周りの影響が大きかった。自分の受験の年は、私立大の定員制限の影響で第1志望校に入れなかった人が多く出て、受験生の間で「浪人しようか」という雰囲気があって、それに影響を受けた。

どんな自分になりたいか

 ――大学生活を送っている今、自身の受験体験をどうとらえていますか?

 C 悔しい結果となったが、入った大学で花開くよう頑張っている。現役時代はとにかく良い大学に入らないと、という気持ちが強く、大学に入ることがゴールだと思っていたところがあった。2度の浪人生活を経て、自分がどのようなことを学び、そしてどのような自分になりたいかについて真剣に考えるようになった。

 B 結果的に進学した大学で良かったと思う。学生生活を経ていくうちに、大学に入学したぐらいで人生は思っていたより変わらないと思った。浪人したことによって、自分は周りを意識しすぎていたことに気づくことができた。

 A 無我夢中で志望校合格を目指した経験は誇りだが、大学に入ってさまざまな人に出会い、大学受験は人生の通過点でしかないと気づいた。私は今、学習塾でアルバイトをしているが、教える立場の人が、受験する人たちの視野を狭めたり、精神的苦痛を与えたりしないよう最大限配慮することが必要なのではないかと感じている。

 ――ありがとうございました。


 <参加学生のプロフィル>

A=私立大3年女子・現役

B=私立大4年男子・1浪

C=私立大3年女子・2浪

D=国立大3年男子・現役

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