「破壊魔」。これは、次々になんでも台無しにしてしまう私を見かねた母がつけた、うれしくないあだ名だ。旅先で買ったピアスを破損させたり、母から譲り受けた洋服の裾を切ったり。音楽プレーヤーの液晶画面はカバンの中でバキバキに割れてしまうなど、予想外のところで壊れてしまう。大切にしたい気持ちはあるのに、物を長持ちさせることができない。申し訳なくて高価なものは買えないでいた。
そんな私が先日、お気に入りの古着屋さんに立ち寄った時のこと。少し値の張るブランド物のローファーに目が留まった。大枚をはたいても、またすぐにダメにしちゃうだろうな……などと思っていると、店員さんが一言。「毎回はくごとにお手入れをして、靴底が減ったら修理に出して、きちんとメンテナンスすれば一生ものですよ」
その言葉を聞いてハッとした。わたしが物を大切にできないのは、大切にする時間を作ってこなかったからなのだ。買う、使う、それで満足。破壊魔は一発で壊すのではなく、手入れをないがしろにする時間の中で物をダメにしていたんだな。
散々悩んだあげく、結局、少し奮発してその靴を買った。一緒に革靴専用のクリームも。片付けたり、整えたり、繕ったり。使う物に愛着をもって、そろそろ破壊魔を卒業したいな。【上智大・川畑響子、イラストは早稲田大・吉村千華】