新型コロナウイルスの流行は、いまだ収束の見通しが立っていない。そんな中、最前線でウイルスと闘っている医療現場は疲弊し、不安の声も多く上がっている。医師や看護師を目指す学生たちにとって、医療現場での実習は不可欠だが、彼らはこの未曽有の事態を、どう受け止めているのか。キャンパる編集部はオンライン座談会を開き、学生たちに率直な思いを聞いた。【司会・まとめ、立教大・明石理英子】
――コロナ禍に見舞われましたが、今年度に入ってからの実習や実技の授業は予定通り行われましたか。
A 夏休みに他県で実習を行う予定だったが、中止になった。
B 実習は延期になった。大学や大学病院のある県ではここしばらく感染者が出ていないので、実習開始の2週間以上前からその県内にいることが参加条件になっている。
C 7月に予定されていた実習は、オンライン形式へ変更になった。
D 実技の授業や病棟で行われる予定だった授業は、後期に延期となった。
E 実習期間中に東京都内の感染者数が増加したため、途中で対面形式からオンライン形式に変更された。
――一切の変更なく実習や実技の授業を行うというのは難しいようですね。今後の学習について不安はありますか。
D 延期になった実習がきちんと行われるのか心配。
E 対面形式で実習できないのは不安。進路を決める参考にしようと思っているから。今後も長期の実習が予定されているが、どうなるのかわからない。
――皆さんが医師や看護師として医療現場に配属される際の不安や心配はありますか。
A 新型コロナの流行が続いた場合、医療従事者になれば今までよりも感染リスクが高まるという不安はある。
B たしかに。だが自分が感染することよりも、知らぬ間に自分が他の患者さんにうつしてしまうことの方が心配。
C 私は、医療従事者が世間から偏見の目で見られてしまうのが怖い。
――新型コロナの感染者の増加で、医療崩壊を危ぶむ声が出てきています。現在の医療体制について問題だと感じることはありますか。
E 研修医が低賃金で長時間拘束されるなど、過酷な労働環境にあると聞いたことがある。その原因には、医師不足があるのではないか。
A コロナ禍で、医師の仕事はさらに増えているそうだ。医療機関によっては、重症患者のみ受け入れるなどの選別も必要になるかもしれない。
B 状況によって、医療従事者が不足している地域が異なるように感じる。従事者の派遣や治療の協力などが、県をまたいでもっと行われてもよいと思う。
D 仕事内容や仕事量に見合った給料が支払われず、問題になっている。これを改善するためには医療機関への国の支援の強化が必要だと思う。
――いろいろな問題点や改善策が挙がりました。一方で、新型コロナの流行を通して、皆さんが学んだことがあれば教えてください。
C 地域の感染症対策について実際に行われている話を聞くことができ、勉強になった。教育の場が制限されるなど悪い面もあるが、普段学べないことを学べる機会も多いように思う。
D 感染症に関することはもちろん、他の分野に対しても勉強する意欲が高まった。
B 医学生が複数で夜に出歩いているのを目撃され、大学に苦情が殺到した。医学生としての自覚と責任を指摘されているように感じ、自分の行動により気をつけるようになった。
E 私も、看護師を目指す立場として、責任感を持っていかなければならないと改めて感じた。
――皆さんが今、できることは何だと思いますか。
A 今の状況で、できることは限られているが、時間を無駄にせずいろいろな経験をしていきたい。
D 自分が看護師になった時に生かせるよう、コロナ禍での患者さんへの対応をしっかり学んでいきたい。
――最後に、将来はどんな医師や看護師を目指していきたいか教えてください。
C 患者さんの最も近くにいる存在として、コミュニケーションをとれる看護師になりたい。
B 僕も、患者さんに寄り添えるような医師になりたい。また、コロナ禍を通して、人々の気持ちを理解するには、社会の状況を把握することも重要だと思ったので、実践していきたい。
E 新型コロナ感染者への差別や偏見が問題になっているが、その原因に、不正確な情報の拡散が挙げられると思う。安心して治療に臨めるよう、患者さんやその家族に正しい情報を伝えていきたい。
――ありがとうございました。
●参加学生のプロフィル
A=首都圏私立大医学部3年・男子
B=地方国立大医学部4年・男子
C=首都圏国立大看護学部4年・女子
D=首都圏私立大看護学部2年・女子
E=首都圏私立大看護学部3年・女子