テーブルに並べられる、色とりどりのサラダ。皆がおいしそうに食べる中、私はひとり、お皿とにらめっこ。いざ、フォークを手に取り戦闘態勢に。慣れた手つきで嫌いなアイツを取りのけていく。とても二十歳を過ぎた大人がやることではない。
どうやら、人より食べ物の好き嫌いが激しいらしい。成長しても、それは少しも直らなかった。これもひとりっ子として甘やかされて育ってきたせいなのか。
友人との食事の席では、注文の前にあれもこれも食べられないと宣言する始末。最近では皆に、嫌いなものを覚えられているほど。情けないなあ。
ふと思い出したのは、今は亡き、祖父が育てた野菜。家の近くに小さな畑を借りていて、季節ごとに立派な野菜を収穫していた。
ぷっくりと真っ赤に熟れたトマト。思い思いの形に曲がったキュウリ。家に持ち帰ってきた祖父はとてもうれしそうだった。大好きなおじいちゃんが作った野菜。それなのに私は、どうしても食べられなかった。祖父はそのことを知っていたのだろうか。
罪滅ぼしをしたくても、もう祖父の野菜を食べることはかなわない。ならいっそ、このまま食べられなくてもいいかなあ……。【津田塾大・畠山恵利佳、イラストも】