情報セキュリティーコンテスト優勝 東京工業大「ナルセジュン」

「SECCON CTF 2019」で見事優勝を果たした、チーム「NaruseJun」のメンバーたち 記事
「SECCON CTF 2019」で見事優勝を果たした、チーム「NaruseJun」のメンバーたち=同チーム提供

高度な技術で切磋琢磨

 昨年12月21、22日に開催された、日本最大の情報セキュリティーコンテスト「SECCON CTF 2019」。見事優勝に輝いたのは「NaruseJun(ナルセジュン)」というチームだ。東京工業大の「デジタル創作同好会traP(トラップ)」の所属学生、学生OBで構成されている。トラップでは個人、またはナルセジュンのようにチームを組んで、デジタルに関する幅広い活動を行う。豊富な知識を有するその団体に話を聞いた。【東京大・高橋瑞季】

 「デジタル創作同好会traP」はその名の通り、パソコンを使った創作活動やプログラミングをするサークルだ。コンピューターに「こう動いてほしい」と指示することをプログラミングと言う。団体の目標は「東工大生の知識の交差点であること」。高度な技術を持つ270人ほどの学生が切磋琢磨(せっさたくま)し、デジタルに関するありとあらゆることに挑戦している。

 トラップにはゲーム制作、グラフィック制作、サウンド制作、プログラミングの4部門がある。それぞれ明確に分かれているわけではないが、プログラミング部門に所属するチーム「ナルセジュン」の4人が「SECCON CTF 2019」に出場した。

 昨年10月に世界64カ国・地域から799チームがオンライン予選に参加。予選を勝ち抜いた14チームが12月の本大会へ出場した。参加者の中にはプログラミングを仕事とするプロの社会人も。そんな強豪たちと競い合い大学生・大学院生によるナルセジュンが優勝したことに、改めてすごさが実感される。

 そんなSECCON CTF 2019は、サイバーセキュリティーの技術を競う大会だ。サイバーセキュリティーとは、ウェブサイトなどへの不正アクセスによる電子情報の流出を防止すること。ただしそこでは「防衛側」だけでなく「攻撃側」の視点にも立つ。つまり「あるウェブサイトに入るためのIDとパスワードを盗む」といったことも行う。攻撃、防衛によって得られる得点をそれぞれアタックポイント、ディフェンスポイントと呼び、その合計により順位が決まる。

 「電子情報を盗むという『悪い人』の視点も演じることに、大会に詳しくない人は戸惑うだろう。けれど攻撃側に立つことで、どうすれば防げるかが見えてくる」。そう説明するのは、ナルセジュンのメンバーで工学院情報通信系修士1年の福成理紀(ふくなりりき)さん。

 2日間にわたって開催された大会での様子について「1日目の開始後は順調にスコアを伸ばしていたが後半はうまく攻略できず、どちらのポイントも伸び悩んでいた」と振り返る。

 巻き返しを狙うために1日目の終了後、4人のメンバーはホテルに泊まり各自問題に取り組んだ。「外が明るくなるまで熱中し、おかげで良い戦略が得られた」

 そして決戦の2日目。戦略がうまくはまり、ディフェンスポイントを中心に大きくスコアを伸ばして他チームとの点差を広げていった。だが一筋縄ではいかない。時間がたつにつれて難易度が上がる問題が出され、途中からポイントを取れず焦りを感じたという。

 しかし最終的には他のチーム同士でのポイントの奪い合いもあり、2日目前半で離した点差をキープして優勝することができた。「ホッとしたと同時に、優勝したという現実が夢のように感じられた」と、福成さんはその時の思いを語る。

 中学からパソコン部に所属していた福成さん。「顧問の先生にエクセルでゲームを作る方法を教わった」という。将来は「ゲーム制作の会社に入りたい」と話す。

ゲーム制作も

 豊富な知識を持つ学生たちが所属するトラップ。プログラミング以外の部門も負けてはいない。特にゲーム制作は、団体の活動の中心となっている。

 制作に費やすのはなんと1年間。4月に入った新入生は、その後の1カ月間でまず創作に必要なさまざまな基礎知識をたたき込まれる。「6月には学年を超えてチームを組み、どんなゲームをつくるか企画段階に入る。そして1年かけ、試行錯誤しながら細部まで詰めていく」とトラップ代表で工学院情報通信系2年の小尾賢生(おびたかお)さんは言う。

 部員がつくったゲームアプリの一つを見せてもらった。忍者に扮(ふん)したキャラクターをゴールまで導くというもの。面白かったのは「背景」を動かしてキャラクターをゴールへと向かわせる点だ。こういったロールプレーイングゲームでは通常「キャラクター」自体を操作するものが多い。「背景」の操作という点に、彼らの斬新な視点が感じられた。

 「自分の考えたアイデアがゲームとして形になるのは、とてもうれしい。他の人に作品に触れてもらい、意見をもらうのも喜びだ」と小尾さんは話す。これからの目標について小尾さんは「人と人をつなぐアプリやサービスを生み出したい」と意気込む。

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