自分らしさとは
「あなたらしさを見せれば大丈夫」。就職活動の面接前、何度も言われた言葉だ。この文言を聞くたびに、「自分らしさ」とは何なのかと自問自答してしまう。
負けず嫌い、まじめ、好きなものに対して情熱的、理屈っぽい、不器用……。「私」を形容する言葉はいくつも思い浮かぶ。だからといって、それらがそのまま「らしさ」につながるかといわれると、しっくりこない。パズルをはめるように、時と場合によって自然と変化させているから。一貫性がないように思われても、どれも偽りの姿ではない。ゆえに、一つの言葉で説明しようとすると、何かうそをついているような後ろめたさがあった。
そんな答えの出ない時間から逃げようと、ひたすら物語の世界に没入した。登場するのは、矛盾がない行動をとる人間ばかりではない。面接だったらすぐバツがつくだろう人もいる。それでも、みんな作品の中で必死に生きている。「わからないから、面白い」。尊敬する作家の言葉を思い出す。
「本当の自分らしく」。キャンパるに入って最初の新人記者コラムで書いたことだ。今となっては、そんな簡単にわかっていた気になっていたことが恥ずかしい。でも、これでいいのだと思う。煙のように実体がないそれと対峙(たいじ)し続け、理解した気になったり、理解できないと苦しんだりを繰り返して。なんとか形を作ろうともがくしか、私にはできないのだろうから。ならばせめて、考え続けることはやめないようにしたいと思う。【早稲田大・今給黎美沙】