考え過ぎず
コミュニケーション能力。「就活」という文字がちらつき始めたこの時期、耳にすることが多くなった。生きていく上で欠かせない「話す」という行為。それは長い間わたしをわずらわせてきた。決して話すことが嫌いなわけではない。ただ、自分からどう話題を提供したり、返答したりするか、人より悩んでしまうのだ。
たった一言を発するのもあれこれ考えてしまう。親しい友人でも。何か話さなきゃ。どう伝えたらいいだろう。変な意味にとられてしまうかも。頭の中で思考が渦を巻いた結果、気が付くと話題は他に移っている。ああ、また言えなかった。そう考えるうちに、口を開く数はどんどん減ってしまう。
そんなある日、自宅で課題に取り組みながらラジオを聴いていたときのことだ。話をうまくまとめるコツが知りたい、というリスナーからの手紙。パーソナリティーたちの会話からこんな言葉が耳に入った。「これを言ったらダメかも、とか考えると本当に言いたいこともわからなくなる。そこまで考えなくていいんだよ」
衝撃だった。考えて話すことしか頭にないわたしと全く違う。なにより、彼らの声から伝わってくる楽しそうな様子。どうやらわたしの心配は取り越し苦労だったようだ。会話を楽しむという一番大事なことを忘れていた。
考えすぎるこの性格は変えられないかもしれない。うまく言葉が出てこなくてもいい。会話を楽しむため少しずつでも、自分の気持ちを伝えていく。【学習院女子大・渡口茉弥】