参院選投票日直前、大学生の政治への目
参院選の投開票日が21日に迫った。先週の参院選企画「聞いてみました」では、学生の投票に関する意識を調査した。今回はそれに続き、学生が選挙や政治をどう見ているか、座談会で生の声を聞いた。【まとめ、東洋大・佐藤太一】
--参院選が近づいています。今までの選挙では投票に行きましたか。
A 二十歳になってから行くようになった。大人になったし、行かないといけない義務感を覚えて。
B 恥ずかしながら、一回も行っていない。住民票を移していないのが一番の理由。
C 同じく行ったことがない。選挙後の開票速報をテレビで見て、選挙があったことを知るレベル。
D 毎回行っている。政治に参加する手段だし、家族が皆行っているのもあって、行くのが当然という認識。
--投票の際には、どんなことを重視しますか。
D 政党で選ぶことが多い。公約を新聞でチェックしている。
A 党の公約はなかなか理解しきれない。政策比較が簡単にできるウェブサイトやアプリでどこに入れるか決めている。
--選挙や政治に関する情報は、どうやって得ていますか。
A テレビが多いかな。大学やバイトが終わった後の、夜のニュース番組しか見られない。
D テレビか、家族で加入しているデジタル新聞。
C 普段は、ツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)ばかり見ている。そこに流れてくるニュースしか目に入ってこないけれど、すぐに情報元にアクセスできるのは便利。
--目にするなかで、関心を持っているニュースはなんですか。
A 消費増税。暮らしにかかわることだし、大学生でも払うものだから。
C それは私も同じ。使い道がよく分からない。払うならちゃんとしたことに使ってほしい。
D 年金問題。自分が払う年代になったから。将来自分がもらえるか心配。
B 待機児童の問題は関心がある。親が保育士だということと、大学でまちづくりを学んでいることがある。
--大学での学びが、政治への関心につながることもありますね。皆さんはどうですか。
A ゼミで外国人実習生について調べる機会があり、関連する法律を調べた。
B まちづくりのゼミに入っているので、地域活性化や地方創生には関心がある。
C キャリアデザインの授業でディスカッションすることがあるけど、女子大ということもあり、みんな子育てや育休に関心をもっている。
--前回の「聞いてみました」のアンケートでは、憲法改正問題に関心があるという回答も多かったのですが、どうですか。
A 最近になってから調べるようになった。社会に出る前にちゃんと知識を持っておくべきだと感じて。
B 留学中、現地の学生が日本の憲法問題について関心を持っていたのを見て、自分でも関心を持った。
D 一時より議論が静まっている印象。改正が強行採決されないことを願っている。
--政治について、家族や友人などと話すことはありますか?
D 家族とはニュースを見ながら話す。知らないの?と言われれば、ちゃんと調べないといけないと思う。
B ゼミの友人とは、ゼミの内容にからめて話すことはある。
A 他人と政治について話すことは、何となくタブー視されている気がする。普段の会話で政治の話題になることはほとんどない。
C 小さいころに親から「だれに投票したかは聞いてはいけない」と言われて、それからタブーなのかな、と思うようになった。
国会みんなで見て議論
--投票の秘密と政治の話題は別物ですが、タブー視されている面はあるかもしれません。どうしたら普通に意見の交換ができるようになるでしょうか。
D いろいろな社会問題についてディスカッションをするサークルに入っている。いろいろな意見の人がいるけれど、批判でなく、肯定的な反応が多いから議論が活発になっている。
C 私はゼミでパブリックビューイング(大型のスクリーンなどで、観戦、観劇を行うイベント)について研究している。議会や討論の様子もパブリックビューイングすれば気軽に見に行けるし、話すきっかけになると思う。
B それはいい考えかも。政治的な活動をしている団体には距離を感じるし、みんなで気軽に参加できる場は必要。
--政治への距離感は、どこから生まれているのでしょうか。
D 教育にある気がする。中学、高校での公民や政治経済の授業は少ししかやらないし。見えない抵抗感は、そこから来ているのでは。
C たしかに。私は高校で政経を選択しなかったから、政治の仕組みすらよく分からないまま大学生になってしまったかも……。
紙で投票って古くない?
--われわれ若者に対して、政治参加を呼び掛ける動きも見られます。
C 「若者向け」だけでは飛びつかない。何が今、政治の問題になっているか。しっかり説明しつつ歩み寄ってほしい。
B 若者の投票率を上げたいなら、気軽に投票できるネット投票を始めたりすることが必要だと思う。この時代に紙で投票って方が時代錯誤の感がある。
A 参加しないで、自分たちにそのツケが将来回ってくるのは避けないといけない。政治参加の意義をちゃんと知らせる必要があるはず。
--ありがとうございました。
座談会参加者
A=私立文系4年・男子
B=国立文系4年・女子
C=私立文系3年・女子
D=私立文系1年・女子