西武文理大「文理ブライダル」 夫婦の門出、一から演出
西武文理大(埼玉県狭山市)で5月18日に開催されたオープンキャンパス。数々の企画が行われていた中でひときわ目立ったのが、学生たちによる本物の結婚式「文理ブライダル」だ。どのような結婚式が演出されたのか。
このプロジェクトの始まりは20年前のこと。「大学祭で結婚式を行いたい」という学生のひとことがきっかけだった。プロジェクトの大きな特徴である学生たちが一から作り上げることは、大学祭で最初に行われた式から変わらない。以来、模擬も含め、オープンキャンパスで年に約5組の式を実施し続けている。式への申し込みに制限はなく、過去には同大の卒業生が式を挙げたこともあるそうだ。
現在のメンバーは「ブライダルプロデュース」という授業を履修するサービス経営学部の1~4年の学生。授業の中ではどのような演出にするか、どうすればゲストに喜ばれる式になるかなどの意見交換を、学生同士で行う。プロデュースから会場の設営、ゲストの案内まで全てを学生たちで取り組む。今回の式には約80人の学生がアテンド、音響などのチームに分かれて参加。入学したばかりの1年生もチームに加わっている。
今回のカップルはルーマニア出身の新郎(40)と日本人の新婦(35)。式のテーマは、2人が結ばれたことによってできた「輪」。新郎新婦から輪が広がっていくように見えることをイメージし、囲むように参列者が並ぶよう会場作りがされていた。半年ほど前から話し合いを重ね、2人に合った式になるように提案してきた。
取材当日はオープンキャンパスに参加していた高校生たちも式を見守った。会場は普段は図書館として使用されているスピナッチホール。教会風の装飾がされたホールにハンドベルの音が響く中、新郎新婦が入場。涙を流す親族の姿も。人前結婚式で参列者から結婚の承認を得た後、自然と新郎新婦のもとに家族や友人らが集まっていく。国を超えたカップルがつながった瞬間、会場中に温かい拍手が鳴った。
「自分たちはあくまでも黒衣に徹する役割。主役である新郎新婦のお二人のお手伝いをさせていただく立場なんです」と語るのはリーダーの立沙世子(たつさよこ)さん(サービス経営学部3年)だ。ブライダルというとキラキラした表面の部分のイメージが大きい。しかし、演出や案内がどう受け取られるのか、どうつながっていくのか。形にしていくことの大変さを知ったという。
プロジェクトを担当する徳田行延教授(58)は、「本番で私たち教員が動くことはあまりないです。ほとんど学生たちが自主的に動いています」と話す。
その言葉通り、挙式や披露宴パーティーでゲストと接しているのは学生たち。常にあちこちに目を配り、細かなことも見逃さない。20年分のノウハウが受け継がれてきた結果だろう。
「ここで式を挙げてよかった。その一言をもらえることが本当にうれしいです」。立さんは笑顔でそう話す。記者もこんな優しさに満ちあふれる式をいつか挙げたいと思った。【学習院女子大・渡口茉弥、写真は東洋大・佐藤太一】