なにコレ!? 京都の銭湯、学生と共存 風呂掃除担当、家賃・光熱費は無料

蒸し暑い閉店後の銭湯で、汗を流しながら風呂掃除をする加納さん


 「学生はこっちに住んではるんですよ」と、戦前から続く京都市上京区の銭湯「山城温泉」のオーナー、林大輔さん(44)が案内してくれた。銭湯脇の細い通路を抜けてすぐ、昭和を感じさせる古びたアパートが見えてくる。経営歴20年以上となる林さん。その林さんが山城温泉を継ぐ以前から、家賃と光熱費を無料にする代わりに、学生が住み込みで風呂掃除の奉仕を行う全国でもユニークな取り組みが行われている。

 住み込みが必須なのは、銭湯営業には風呂掃除が一日も欠かせない一方、そのための深夜アルバイトの確保が難しいという事情が背景にある。「寮に住んでいれば、勝手な都合で風呂掃除を休まれることもないですからね」と笑いながら林さんは話す。林さんの光熱費の負担は大きいが、その分、風呂掃除にかかる人件費がゼロなのは助かっていると話した。 

 「1人暮らししたいが、アパートに住むほどのお金はない。ここならできると見つけたのが山城温泉だった」。京都大文学部1年の鈴木光希さん(19)が、住み込みを始めたきっかけをそう振り返る。兵庫県の実家から大学まで電車で2時間半。山城温泉は大学まで自転車で20分だ。「楽しそうだったので、4月から住むことにした。家賃がかからないので、限られた仕送りを食費だけに使えるのが助かる」と話した。

 風呂掃除は休業日の木曜を除き、住み込みの学生4人でシフトを組んで行われる。鈴木さんの担当は、火曜と土曜。銭湯が閉まる午前1時から3時までが掃除の時間だ。住み始めたばかりの頃は、朝の4時まで掃除をしたこともあるという。「掃除をする約束の上で住まわせてもらっている」責任感からの行動だ。

 山城温泉の寮は「人間関係を学ぶ場」と鈴木さんは話す。深夜の掃除は学生とオーナーで行うが、始めたばかりの鈴木さんは、オーナーに自分の掃除場所まで手伝ってもらうこともあった。手伝ってもらった時のお礼やあいさつ、他のメンバーとの共同生活を通して、周りに気を配れるようになったと話した。

 佛教大4年の加納直樹さん(21)は、住んで3年目。下宿生の中では最年長だ。深夜の掃除は翌朝がつらいが、眠気と闘いながら、学業と風呂掃除を両立してきた。ある日、臨時で番台の仕事を手伝った時に「わざわざ山城温泉を選んで来てくれる利用者がいると分かった」という。「そんな方々のためにも、きれいな浴場にしなければ」と加納さんは話す。

 林さんは寮生活にも気を使っている。雨漏りの修繕や、トイレットペーパーの補充なども林さんがしてくれるとのこと。下宿生と音楽ライブや旅行に行ったこともあるという。「日本一きれいな銭湯」を目指して日々掃除に励む学生と、それを支えるオーナー。今日も山城温泉では、深夜に大学生が風呂掃除をしている。【埼玉大・佐藤道隆】

 <山城温泉メモ>営業は午後3時~午前1時。日曜日のみ午前8時~翌午前1時。中学生以上450円、小学生150円、乳幼児無料。

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