大楽人 草ストロー 日本で広げる 東京農業大3年・大久保夏斗さん

環境に配慮した暮らしへの思いを、草ストローでかなえた大久保夏斗さん=本人提供


 昨年7月から本格的に始まったレジ袋有料化のように、日本でも「サステナブル(持続可能)な暮らし」を目指す取り組みが広く注目されている。ただ、実際に環境に優しい行動を具体的に起こすことはなかなか難しい。そうした中で、ベトナムの「草ストロー」の輸入販売をするという形で自らアクションを起こした大学生がいる。東京農業大学3年の大久保夏斗さん(20)だ。

脱プラスチック「自分にできることは…」

 昨年7月から本格的に始まったレジ袋有料化のように、日本でも「サステナブル(持続可能)な暮らし」を目指す取り組みが広く注目を集めている。ただ、実際に環境に優しい行動を起こすことはなかなか難しい。そうした中で、ベトナムの「草ストロー」の輸入販売をするという形で自らアクションを起こした大学生がいる。東京農業大国際食料情報学部3年の大久保夏斗さん(20)だ。

 幼少期から相模原市の自然豊かな公園の近くで育った夏斗さん。高校1年の時、ウミガメの鼻にプラスチック製ストローが刺さっているニュース映像を見て、廃棄プラスチックによる地球規模の環境汚染問題に関心を持った。

 「何か自分にできることはないか」。そんな思いを抱えて大学に進んだ1年の夏、転機となる出来事が起きた。3歳年上で、当時大学4年だった兄の迅太さん(23)が旅行で訪れたベトナムから持って帰ってきた、「草ストロー」に出合ったのだ。

 その原料は、ベトナムのホーチミン郊外の農村で栽培されているレピロニアという植物で、中空の茎を利用して作られる。耐久性に優れ、100%自然に返り、肥料や飼料にも再利用できる。ただプラスチック製に比べて作る手間がかかり高価なため、ベトナム国内ではあまり普及していない。この草ストローを見て夏斗さんは、高校生の時に見た苦しむウミガメの様子を思い出し、「大学生活を無駄にせず、何とかこれを日本に普及させたいと思った」という。

ベトナムから輸入

 ただベトナム語はできなかったので、現地の工場とのやり取りは、兄の友人でベトナム人留学生のホアン・ゴック・ミンさん(28)にお願いした。草ストローの輸入、販売のために必要な手続きについての知識も皆無だったが、税関手続き、残留農薬の検査、衛生基準は、インターネットで一つ一つ調べ、試行錯誤を繰り返した。

 現地スタッフの確保を終えても、「日本の衛生基準をクリアするのは大変でした」と語る。日本で堂々と販売できるように、夏斗さん自身が日本の基準を満たす製造マニュアルを作成し、製造現場で徹底させている。翻訳はミンさんが担当したが、そこには手袋や帽子を装着すること、爪を切ることなど初歩的なことから書かれているという。

会社設立し売り込み

 全ての準備を終え、草ストローの国内販売を開始したのは昨年4月。その1カ月後、「取引先を増やしていくには、個人よりも法人の方が信頼度が高くなる」と考え、会社を設立。夏斗さんが代表に就任した。メンバーは、草ストローに出合った時からサポートをしてくれていた迅太さんとミンさんの計3人。草ストローが船便で到着するごとの手続きをはじめ、国内での仕事のほとんどは代表の夏斗さんが行う。兄には土日に手伝ってもらったり、広報をお願いしたりしているという。会社設立は新型コロナウイルスの緊急事態宣言が初めて発令された時期と重なる。電話やメールを使い、全国のオーガニック(有機栽培)食材を売り物とする飲食店を中心に売り込みをした。使ってもらわないと良さが伝わらないと、無料サンプルを提供する工夫もした。

業務用価格は小売価格よりも安く、500本で3500円(税込み、長さ20センチ)。100%自然由来なので、箱には品質保持期限(使用期限)が書かれている=谷口明香里撮影
業務用価格は小売価格よりも安く、500本で3500円(税込み、長さ20センチ)。100%自然由来なので、箱には品質保持期限(使用期限)が書かれている=谷口明香里撮影

SDGs追い風に

 そうした地道な努力に加え、SDGs(持続可能な開発目標)が注目を集め、自然環境に優しいエシカル(倫理的)消費の推進をうたう企業が増えつつある時流も後押しして、販路は順調に拡大。現在では約160店舗で利用されて、本数にして約100万本を売り上げたという。

 紙製の約2倍、プラスチック製の10倍近い、20本で400円(税込み、長さ20センチ)という価格は割高だ。しかし「草」をくわえるというインパクトのみならず、途上国の農村支援に役立つというストーリー性や、安全性に共感したお店のオーナーが購入してくれるという。店にとっても環境重視をアピールでき、草ストローがお客さんとの新たなコミュニケーションツールになるようだ。

 現地のベトナムにも利点がある。草ストローの主な輸出先だった欧米での需要がコロナ禍で落ち込み、出荷減で製造スタッフの雇用が危機的な状況だったが、夏斗さんたちとの取引が始まり、持ち直したという。

 夏斗さんは大学で農村支援や農業が環境に与える影響などを学んでいる。輸入販売の仕事は大学での学びと関連するところがあり、「コロナの感染が終息したら、実際にベトナムに行って農村支援にも力を入れたい」と話す。取り扱うのは、草ストローだけにするつもりはない。サボテンから作る、「サボテンレザー」のブランドを立ち上げるなど、自然に優しい新商品をさらに普及させていけるよう意欲を燃やしている。

 記者も草ストローを使用したが、ふやけないため、くわえていても紙のような不快感はない。草からできていると感じさせないくらい使いやすく、またデザインも、夏の飲み物にマッチしてとても良いと感じた。【千葉大・谷口明香里】

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