岩重佳治弁護士インタビュー コロナ困窮、学生の対処法 奨学金や国、大学の支援策 困ったら声を

新型コロナウイルス感染拡大を受け、多くの大学が学生に対して独自の支援策を行っている。文部科学省も、コロナ禍でアルバイト収入が激減した学生らに最大20万円を支給すると発表した。だが、各大学による支援策や対応にはばらつきが目立ち、複雑な支給条件に戸惑う学生も多い。奨学金制度や大学の教育問題に詳しい弁護士の岩重佳治さんにお話をうかがい、学生が今できることをたずねた。

 ――大学側が打ち出した支援策には、給付金の額や支給対象などの違いが多くあります。私は、公平性を考えればできる限り各大学の対応は統一すべきだと考えています。岩重さんは、各大学が学生側に対してどのような対応を取るのが適切だと思いますか。

 岩重 学生が受給対象の奨学金事業を手がける日本学生支援機構では現在、新規の給付型・貸与型奨学金の申請期間を延長させている。大学側は、給付金だけでなく、こうした今使える奨学金制度の活用支援体制を早急に整えるべきだ。学費の延納や分納を積極的に認めることも、大学が行うべき対応ではないだろうか。また、大学窓口の対応を充実させ、多くの学生の相談に乗ることも必要だと考える。ただし、大学だけにできることは限られているため、国がもっと支援する必要がある。

 ――学生からは、オンライン講義による講義の質の低下や、大学の施設が使えないことなどを理由に、学費の減額を求める声も上がっています。

 岩重 学生の学費負担を減らしても、学校運営にかかる経費が減るわけではない。大学側は、学生から受け取れない分のお金を何らかの方法で負担せねばならない。施設の維持費も単年ごとではなく、長期的に予算を組み立てている。減額のためには大幅な公的財政支援が必要だ。

 ――今ある学校側の支援策を最大限に使うことが重要になってきますね。コロナ禍で、岩重さんのもとへ相談に来る学生もいらっしゃるのではないでしょうか。

 岩重 コロナ禍で家計が悪化した場合に受給できる新給付型奨学金を申請して大学に入学したが、その大学では利用が認められておらず受給できなかった、というケースがあった。申請したいが、日本学生支援機構が窓口業務を縮小している影響でなかなか電話がつながらずに手続きができない学生もいる。

 ――国から認定された大学でなければ奨学金を受けられないという制度は、新たな問題を生んでしまいますね。相談を受けた学生には、どのようにアドバイスをするのですか。

 岩重 現実に、今ある奨学金制度を利用して乗り越えることも必要。進学前に受給が約束される「予約採用」型の奨学金は成績条件が厳しくて受けられないという方でも、大学進学後に申し込む「在学採用」型の奨学金であれば、条件を満たせる場合がある。その際、貸与については返済のリスクを最小限にして利用する、具体的な方法を伝えている。

 ――文部科学省が先月、突然の収入減で学業継続が困難になっている学生43万人に対し、最大20万円を給付すると発表しました。しかし、支給条件が複雑で申請に困る学生が多いのではないかと感じます。岩重さんはどう思われますか。

 岩重 こういった給付金が一時しのぎ的にしかならない学生は大勢いる。また支給条件を難しくするほど手続きが複雑になってしまうため、行き渡るべきところに届かない恐れがある。この給付金の窓口である日本学生支援機構の対応の遅さも懸念されている。実際に受け取れる頃には大学をやめざるを得なくなっていた、というケースが発生してしまうかもしれない。

 ――学生たちは「今」、困窮しているからこそ、早急に届けなければいけないですよね。では最後に、私たち学生が今できること、すべきことがあれば教えてください。

 岩重 学生たちが互いの思いや意識を共有し合うことが大切。孤立してしまってはいけない。例えば自分が通う大学の友人らと現状を話し合う機会を設けたりすると良いのではないか。また、政策を決定する大人たちが過ごしてきた学生時代と今の時代とでは、状況が全く違う。したがって、今困っていることを学校などに伝えていくことは非常に重要なことだ。学生たちは多くの改善策やアイデアをもっている。大学の主人公は学生。学生が声を届け、みんなで大学をつくっていくという意識が大事だ。

 ――私たち一人一人の思いを伝え合うことが大切ですね。救われる学生が増えることを願っています。本日はありがとうございました。【上智大・太田満菜】


■人物略歴

岩重佳治(いわしげ・よしはる)氏

 弁護士。多重債務問題などに取り組むうちに奨学金返済に苦しむ人が多いことを知り、2013年に「奨学金問題対策全国会議」を設立。事務局長として返済困難者の支援などを続けている。


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