2019/07/09 読見

読見しました。:夏の変身願望

 マニキュアをしてみたい。そろそろサンダルを出そうかという頃、大人に憧れる中学生のような願望が降って湧いた。

 いつもは化粧や服すら適当にしている。だからマニキュアという単語も気恥ずかしい。ペディキュアなんてもってのほか。「足の爪を塗る」で十分だ。

 それなのになぜこんな願望を抱いてしまったのか。オシャレに目覚めた? 恋をした? どれも心当たりがない。ただのちょっとした好奇心だ。

 とはいえ周りの人に聞かれたらなんて答えよう。ハタチもとっくに超えたというのに、爪を塗るだけでも口実を探してしまう。私にとってはそれくらい大きな一歩なのだ。

 似合わなかったら、周りに何か言われたら、すぐに落とせばいい。たくさんの「保険」をかけて、母親から借りた小瓶から濃い赤色を足の爪に広げていく。なんだか女の子みたいだと、できあがった10本の指を見て思った。塗り残しもはみ出しもあるが、いつもは暑いだけの夏を楽しめるような気がした。

 「爪塗ってんの?」。物珍しそうに爪先を見る友人には、こう答えた。「夏だからね」【一橋大・川平朋花、イラストは大妻女子大・中嶋美月】

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