2019/06/25 なにコレ!?

大学生向け「家出マニュアル」
筑波大生がWEB公開

 「虐待」。近ごろメディアで目にする機会が多い。時には命が脅かされることもある。そんな時、選択肢の一つとして「家出」をすることが挙げられる。大学生のためにつくられた「家出マニュアル」がある。

 「家出マニュアル」をつくったのは、筑波大学人間学群3年の山口和紀さん。大学で福祉を学ぶ中で、家族問題などを研究する今一生(こんいっしょう)さんの講演に興味を持ち参加した。そこで筑波大生の高校時代の家出体験談を聞き、マニュアルをつくろうと思い立つ。1年前から構想していった。

 特徴は大学生のためにつくられたということ。そのため内容は、家出を経験した人の体験記で構成されている。執筆者はソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で募集し、3~4時間で募集人数に達した。

 最終的に100人の体験記をインターネットで公開することが目標だ。現在3人分が匿名で公開されている。家出の理由はそれぞれだが、「子どものときから親に心理的に虐待され、学生になって自覚したから」「父の怒声から逃げるために」などの切実な声が寄せられている。家出マニュアルの名の通り、住居の確保や金銭面、メリット・デメリットなどが具体的にアドバイスされている。

 大変だったのは、執筆者に最後まで書いてもらうこと。それでも執筆者の多くは「これから家出する人の力になれば」と話す。自分が当時困っていたからこそ、協力したいと強く思うそうだ。

 完成に向けて活動する一方、山口さんは「必ずしも家出をしたほうがいいとは言えない」と話す。なぜなら、多大なリスクをともなうからだ。未成年か成人しているかで支援の幅が異なり、性別によっても環境整備の度合いが分かれる。だが不安定な精神状態で不安定な家出をするリスクをとっても選ぶ価値はあるかもしれない。命に関わる状況ならなおさらだ。

家族問題、悩んだら見て

 困難をともなう家出だからこそ、確かな情報が必要不可欠。山口さんは「このマニュアルが信頼できる情報源として、家出を考えている人の支えになればいい」と語る。公開後には、家出マニュアルへの応援の声が何通も届いた。家出を経験した大人からも「困ったら声をかけて」と温かいメッセージをもらい励みになったそう。

 「家出マニュアル」の閲覧は有料だったが、より多くの人に家出の実態を知ってほしいという思いから、インターネット上で順次無料で公開する予定だ。家庭のことで悩んでいたら、一度読んでみてはいかがだろうか。【昭和女子大・小林千尋】

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