学生注目! 上智短大が閉校へ 外国籍の子、日本語学習支援30年超 共生の「種」どう継承 神奈川・秦野

学生注目
昨年12月16日に開催された「お楽しみ会」の様子。上智短大の学生によるピアノ伴奏に合わせて日本語で合唱する子どもたち

上智大学短期大学部(神奈川県秦野市)は1988年から、同市と近隣に住む外国籍の子どもたちやその家族に対して無償で日本語学習や教科学習の支援を行ってきた。しかし同校は今年3月末で閉校となる予定で、このプログラムが2026年度以降も続けられるか不透明な状況になっている。【上智大・平野恵理】

 昨年12月16日、秦野市内の公共施設「はだのこども館」で、上智短大の学生4人と職員2人、そして学習支援を受けている4歳から中学2年生の外国籍の子ども14人が参加して、年末恒例の「お楽しみ会」が開催された。和気あいあいとした雰囲気の中、子どもらは塗り絵をしたり、日本語で合唱したりした。

子どもたちが上智短大の学生ら支援者に示す親しみや信頼感には、確固とした裏付けがある。このプログラムに参加する学生は普段、自ら毎週小学校・中学校に赴く出張型の支援と、外国籍の幼児から高校生、その家族を公共施設でサポートする二つの形態で学習支援をしている。

 支援対象の子どもの年齢は限定せず、学生たちは日本語学習や教科学習のサポートに加え、奨学金書類作成から受験勉強の手助けまで、進学に必要な準備の支援にも幅広く対応しているという。支援プログラムを統括する上智短大英語科の宮崎幸江教授(64)は「子どもたちがありのままの自分を受け入れてくれる日本人がいることを知って、日本人を好きになる経験をしてほしい」と語った。

30年以上、上智短大の職員と学生の有志がボランティアで行ってきたこのプログラムは、19年に講義と実習で構成される「サービスラーニング」として、参加学生に単位を付与できる同校の正規科目となった。今学期、公共施設で学習支援に取り組む中心メンバーは5人。サービスラーニングの履修者が中心だが、同短大の卒業生や同じ経営母体「上智学院」の傘下にある4年制の上智大学・四谷キャンパス(東京都千代田区)から、宮崎教授の呼びかけで参加する学生も珍しくない。同短大から上智大に編入学した霜鳥甘奈さん(23)は、短大在学時に教育に関心を持ち、サービスラーニングを受講した。「面倒を見てきた子どもが心配」で、現在も秦野での活動に参加している。

妻子殺害が契機

 上智短大によると、同校で学習支援が始まったきっかけは1987年に同市内に住むカンボジア人難民男性が妻と3人の子どもたちを殺害した事件だった。男性は慣れない日本での生活下で孤立し、精神的に追い込まれていたと言われている。

この事件の翌年から、上智学院が掲げる「他者のために、他者とともに」の教育理念のもと、有志の学生たちが外国籍家族の元に出かけて、家庭教師ボランティアを開始。また当時、スペインの聖マリア修道女会から教授として派遣されていたシスターらは訪問先の家庭との信頼関係のパイプの構築に尽力した。

 その後、90年に行われた出入国管理及び難民認定法の改正により、日系2世・3世とその家族の在留資格が新設された。これにより、金属製品など製造業の生産拠点が集まる秦野市にも、ブラジルやペルー、ボリビアからの移住家族が増え、日本語学習支援のニーズは高まっていった。上智短大はこの動きに対応し、子どもらへの学習支援の取り組みを拡充させてきた。

ただ、支援活動を推進してきた上智短大は、少子化や女子学生の共学・4年制志向を背景に2023年、24年度以降の学生募集を停止することを発表した。24年度に入学した学生の卒業をもって閉校となる。

 24年度から実験的に2年間、四谷キャンパスの学生に秦野での活動に参加してもらう取り組みを行うなど、学習支援のプログラム継続が可能か模索中ではあるが、上智短大としての秦野での支援活動は実質的に終了することになる。

 上智短大の閉校で、同校の秦野での支援の取り組みがなくなってしまうことは子どもたちにも伝えられている。12月の「お楽しみ会」に弟とともに参加したペルー出身のシルバナツミさん(14)は流ちょうな日本語で「とても悲しい。分かり合える友達ができて、続けやすい」環境だったと話した。ナツミさんは3年間、同校の学習支援を受けていた。

支える文化蓄積

 宮崎教授は「秦野でセーフティーネットがなくなってしまうことには不安はある」と語る一方、「これまで形を変えて日本語学習支援のコミュニティーは存続してきたから、きっと大丈夫」と話す。秦野市教育委員会との間で問題意識が十分に共有されていることや、市内に日本語教室が複数存在していること、秦野に住む外国人家庭を支える文化の蓄積があることを理由に挙げた。

 上智短大がまいた共生に向けた種は秦野の地でどう継承されていくのか。そして、上智として日本語学習支援活動の精神をどう受け継いでいくのか注目される。グローバル化が進む一方で移民の受け入れ反対を叫ぶ排外的な主張が国内外で高まっている今、異文化との向き合い方が改めて問われている。

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