新型コロナウイルスの感染収束が依然見通せない中で迎えた卒業シーズン。キャンパる編集部では、4人の記者が巣立ちの時を迎えた。学生生活を振り返ってそれぞれがつづる胸の内を、2回に分けて紹介する。
視野を広くもつ 一橋大 鹿島もも
2月から自動車教習所に通い始め、所内のコースと路上で運転の練習をしている。当初、指導員の方々から頻繁に指摘されていたのが「視点が1カ所に固まって、前方を広く見ることができていない」ということだ。私は、一つの物事に集中して取り組むことが得意な半面、集中している間は他のことが見えなくなってしまう癖があるのだ。
大学のゼミやサークル、キャンパるの取材・記事執筆でも同じだった。柔軟な思考や目配りが足りないために、独りよがりな意見を言ったり、大事なことを見逃したり、自分の裁量を超える仕事を抱え込んだりしてしまうことがあった。
そんな悩みを持つ私だが、中学生の頃からの友人と趣味の話をしている時に、意外な一言をかけられた。「前よりも興味の幅が広がったんじゃない?」
確かに、流行にまったく無頓着だった私がこの4年間でアニメを見るようになり、韓国のアイドルグループにはまった。一方で哲学の雑誌も読み始めた。自由な時間が増え、交友関係が広がったことで、いつしか多くの事柄に対して自分から関心をもつことができるようになっていたのだ。
教習所に通い続けるうちに、指導員の方からの指摘は徐々に減ってきた。4月からの新生活に対しては不安もあるが、関心の幅の広がりは、私の「周りが見えない」性分にも、少しずつ変化をもたらすだろう。「視野を広くもつ」ことを意識して、これからも成長していきたいと思う。
相手と向き合う 国学院大 原諒馬
この春から1人暮らしを始める。実家で私物の整理をしながら、私は学生生活の思い出に浸っていた。
愛用した手帳を開くと、入学から3年間続けたコールセンターのアルバイトについて、「どんな人の話でも、まずは聞くこと」と決意表明が書かれている。当時、苦情電話でも話を聞き続けていると、思わぬ打ち明け話を聞かされたことを思い出した。「家族との仲が悪い」「仕事で失敗した」――。怒って電話してきた人々の多くが、心の奥底で寂しさや悩みを共有したがっていた。
かくいう私もそうだ。転校した先の小学校でなじめなかったり、浪人したにもかかわらず第1志望校に入れなかったり。大なり小なり、挫折や困難に直面してきた。しかし、勇気を出して周りの人たちに悩みを打ち明けることで、少しスッキリする。傷つけるのも、助けるのも「人」だと痛感した。
「自分は助ける側になりたい」。そんな思いを胸に大学時代はバイトの傍ら、NGOの集会やヒッチハイクなどで、幅広い層の人と直接話すようになった。もちろん、相手に寄り添えても当事者にはなれない。「俺の立場なんて分かるものか」と怒らせてしまうこともあった。それでも耳を傾け続けて相手の本音を引き出せた時や、心が通い合った時はうれしかった。
大切なのは、相手と向き合うという意識だと思う。4月から記者になる私は、常に謙虚に、思いやりを持って「対話」を続けていく。