昔から、周りと趣味が合わず苦労することが多かった。好きな芸能人や、はまっているテレビ番組。友人たちが楽しそうに話していても、会話に入れず疎外感を覚えることもある。逆に私の趣味も、周りになかなか共感してもらえないでいる。特に仏像がそうだ。
仏像に初めて心ひかれたのは、小学4年生の時。家族で初めて奈良を訪れ、東大寺の大仏を目にしたのがきっかけだ。想像をはるかに超えた大きさと威厳に圧倒されたのを、今でも覚えている。その後、仏像は制作年代によって特徴が異なることや、さまざまな種類があることを知った。奥深さに魅了された私はそれ以来、仏像のとりこになり、毎年のように奈良や京都の仏閣を家族で巡るようになった。
コロナ禍で存分に仏像鑑賞に出かけられない今、少しでも古都の寺や仏像の雰囲気を感じたい。そんな思いから、先日、奈良の寺や仏像の魅力をテーマにした講演会に初めて参加した。
講師の方の話を通して、自分が好きなことを他人と共有できる空間は、思いがけず居心地の良いものだった。参加者の多くは女性だったが、年齢はばらばら。だが、マスク越しに笑顔で話に耳を傾け、時折うなずくその様子はみな一緒。そこにあったのは、まるで音楽ライブでの一体感のようなものだった。
ここではひとりぼっちではない。そんな安心感を初めて覚え、ほおが緩む。またいつか、この空気を味わえたらいいな。そんなことを思いながら会場を後にした。【立教大・明石理英子】